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「提言!これからの日本観光」 「観光」と交通(機関)

2022年7月17日
編集部:木下 裕斗

2022年7月17日(日) 配信

 低迷していた「観光」もようやく復活の兆しを見せ始めた。コロナ禍前京都、鎌倉などの観光都市で市内のバスや電車などの混雑から市民の利用が難しくなり、日常生活にも支障するとして観光客の入市制限を求める声が挙がったのも記憶に新しい。両市民は観光再活性化に期待を寄せつつも混雑再発に心配していると聞く。

 「観光」による交通機関とくに市内バス、電車の混雑は観光シーズン休日をピークとする大きい波動需要の発生にその原因があるだけにその緩和は観光客、観光地、交通機関などの連携による総合的な対策が進まないとその緩和は困難であると思う。なぜなら京都を例にとると市内の主な観光スポットの人出は、春秋の観光シーズン休日とオフシーズンの平日の人出との間に数倍から十数倍にのぼる大きい差があるからだ。

 交通機関側では年間平均値を幾分上回る乗客数を基準に輸送力(便数、要員、車両)を準備するためピーク需要は完全に満たせない。仮にピークに合わせた輸送力を準備するとオフシーズンにはかなりの車両や要員などが遊休化する。鉄道など多額の設備投資を前提とする交通事業では、公私営を問わずこのようなピークに合わせた投資は不可能に近い。

 混雑緩和には需要を時期的時間的に平準化することが必要である。まず観光客が閑散期、閑散時間に観光の重点を移すことだ。観光地など受入側も閑散時の観光を提案したり、イベントなどの閑散期開催を進めるほか観光料金施策(閑散時割引など)も推進し、需要の平準化に取り組む必要がある。

 次に交通機関側についてである。京都のような市内に多くの観光資源を持つ都市では市内交通を観光シーズンの休日に限る臨時的対応として企(事)業別の枠を越えてそれぞれの特性を生かす連携により全体的な効用を高める「総合的観光交通システム」として機能させることを考えたい。

 市内各機関の運賃を統合、ゾーン運賃制とする。さらにシーズン休日に限り各交通事業者、自治体関係者、交通、警察関係者などからなる「臨時総合交通システム運営委員会(仮称)」を設け、一時的に運行調整を委ねる。主要駅、バス停、交差点などにテレビカメラによる交通量観測機器を設置、オンラインで委員会事務局各社に送信する。

 前広に主要観光道路の自家用車流入規制を発動し、交通渋滞の未然防止に努める。同時に観光スポットを結ぶ主要路線区間に限定し、バスの方向別総合輸送力を確保すべく予め登録した予備の車両を会社の枠を超えて緊急配車する、また車間調整を委員会からバス運転者に要請して混雑の発生を抑える努力を進めるなど臨時運行調整機能を発揮させる。

 そして、前記の情報システムにより後刻経費・収入・精算も行う。回送タクシー、自家用車の不使用時情報なども情報システムに入力。バス補完として活用する。このような関係者の連携協働によるピーク時限定の総合策を試行してはと考える。

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

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