test

「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(139)それはお客様のわがままなのか 施設都合を押し付けない

2022年8月13日(土) 配信

 

 旅館では、朝食の時間帯が決められていて、せっかく旅館に泊まり、朝はゆっくりしたい人には、とても残念なことです。最近は、朝食を昼食に変更できるプランも出てきました。お客様の都合に合わせてくれるのであれば、多少料金が高くてもこうした選択ができるのは非常にありがたいものです。

 また、夕食に選べるメニュープランを予約すると、その時点で何にするかを選ばなければならないことがあります。迷いながらも選択しますが、何日も前に当日のメニューを選ぶことには、少し疑問もあります。当日に何を食べたいかは変わるものです。せっかくの良いプランも、そのことでお客様に嫌なイメージを持たせてしまえば、とても残念なことです。

 出張でホテル連泊した際、翌日の日中に予定がないときは、部屋で原稿を書いたりして過ごします。そのときに、部屋の掃除スタッフにドアをノックされることがしばしばあります。

 部屋の掃除を拒否することはできますが、やはり整えられたベッドで休みたいので、掃除をお願いするため、「ちょっと待ってもらえますか」と、慌てて着替えて部屋を一旦離れるのです。あるときは、朝に外出して昼過ぎに戻って来ると、まだ部屋の掃除がされていないということもありました。

 それに対して、とくに不満はなかったのですが、ある日チェックイン時に、「明日のお部屋の掃除は、何時ごろに伺わせていただいたらよろしいですか。ご希望がありますか」と、ハッとするような嬉しい声を掛けられました。

 私は「明日は午前11時から午後2時ごろまで出掛ける予定なので、その間にお願いできたらうれしいです。大丈夫ですか」と返しました。「もちろんです。ではその時間で手配しておきますね」。

 これだけの会話でしたが、朝起きてから、いつ掃除のスタッフが来ても部屋を出られるように前もって着替えて仕事をしていた私にとって、その会話は本当にありがたいものでした。

 宿泊施設側にも業務を行うための都合はあるでしょう。しかし、その都合でお客様にサービスを提供することは、目指す顧客満足とは相反するものでもあります。

 お客様のほとんどは、限られた選択肢の中でサービスを受けることに慣れてしまっているかもしれません。

 ただ、クレームは出ないかもしれませんが、宿泊施設側がそれを当たり前のようにしているとしたら、そこには大きな問題があります。

 私たちサービス業の仕事は、できる限りお客様のわがままに応えてあげることです。もちろん、掛かる手間は費用としてしっかりといただきましょう。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

 

 

いいね・フォローして最新記事をチェック

コメント受付中
この記事への意見や感想をどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。