「提言!これからの日本観光」 「修学旅行」に「産業観光」を
2022年9月4日(日) 配信
コロナ禍のため、ここ1両年事実上休止状態にあった「修学旅行」が復活され始めた。恒例の修学旅行専用列車の出発式も久しぶりに5月に東京駅で行われた。「修学旅行」は日本独特の教育行事とされ、その始まりは明治時代の東京高師の長途遠足で100年余の歴史がある。
コロナ禍前までは毎年、国内ほとんどの小中高校で学習観光旅行を主な内容として実施されてきた。最近の特徴として目立つのは、目的地での1日を分散学習に充てていることだ。
即ち、学年、学級単位の多人数の団体行動ではなく、数人ずつの小グループに分けてグループごとに参加する生徒自身が見学先をガイドブックなどを参考に選び、地図を片手に、公共交通機関利用ないしは徒歩で市内を移動・見学する。この分散学習がコロナ予防に効果的な“密”回避の観光となるため、復活後の修学旅行でも多くの学校が実施すると聞く。
ところで修学旅行を学習効果の高いより実りあるものとするためには、分散学習のテーマとして「産業観光」がふさわしいと思う。それは「産業観光」の主内容となる工場見学などは分散学習方式で始めて効果的観光(体験を含む)が可能になるほか、近年教育の大きいテーマとなった“SDGs(持続可能な開発目標)”の学習にも大きい役割を果たすことができるからである。
“SDGs”はよりよい社会実現のため、国連全加盟国が合意した17の目標(ゴール)を2030年までに達成しようとするものである。未来を担う青少年に、この目標達成の必要性とその手法を理解するには、“SDGs”を「産業観光」を通じて体得させることが効果的であるからだ。日常生活の場を離れ、旅行に出て他地域から自分の居住地とその日常を見つめ直すことのできる修学旅行こそ、その理念を学ぶ絶好の場であり、機会といえよう。
例えばゴールのうち、「⑨産業と技術革新の基盤をつくろう」「⑫つくる責任、つかう責任」「⑧働きがいも経済成長も」などのゴールは「産業観光」の生産現場(工場工房など)見学のなかでこそ、その必要性とアクセス方法が学べるのではなかろうか。
また、「⑰パートナーシップで目標を達成しよう」のゴールは、産業活動がチームワークから成り立っている現実に触れることで体得できるものといえよう。また、分散学習は徒歩と公共交通機関によるため、移動(行動)自体が「⑦エネルギーをクリーンに」の実践につながる。
日本商工会議所 観光専門委員会 委員