岐阜県飛騨市 都竹淳也市長に聞く ロケ誘致による地域連携
2022年8月30日(火) 配信
有名な観光施設がない、知名度が高くないなどの悩みを抱える地域が、観光業でまちを盛り上げ、地域を活性化する手段になると期待するロケツーリズム。
コロナ禍で家で過ごす時間が増え、メディアでの露出が大きな宣伝効果を生み出している地域もある。岐阜県飛騨市は市長自らが先頭に立ちロケ誘致を進めるだけではなく、県内13の自治体が参画する「ぎふロケツーリズム協議会」の発起人として、自治体間の連携も推進している。都竹淳也市長に話を聞いた。
□自治体間の連携のきっかけに
――都竹市長が長年ロケツーリズムに取り組まれているなかでの気付きを、教えてください。
飛騨市がロケツーリズムに取り組むきっかけになったのは、2016年に公開されたアニメ映画「君の名は。」です。映画が公開され、作品を観た人が大勢飛騨市を訪れるようになりました。そこから、飛騨市のロケ誘致は始まりました。
最初はロケを誘致できれば、観光客が次々に訪れると思っていたのですが、毎日たくさんの映像作品が放送、放映されているので、ロケが行われた場所すべてに人が出掛けるというのはあり得ないと気が付きました。
一方で、コマーシャルも含めいろいろな映像作品のなかに少しずつ飛騨市が出てくるようになり、市民が喜び、自分の住む町のよさに自信を持つようになってきました。このようすを目の当たりにし気が付いたのが、飛騨市の取り組むロケツーリズムは「シビックプライドの醸成」であるということ。市民の自信は、まちを動かす原動力になりますし、いろいろな取り組みも生みます。訪れてくださる人はその取り組みによって、初めて地域のファンになるのだと思っています。
――ロケ誘致の際に大切にしていることは。
映像制作者をリスペクトし、共に映像を作ることです。仲間として、実際のロケに共に取り組んでいくことで映像制作者から信頼と支持を得られるということが、これまでの経験で分かり始めています。
――都竹市長の掲げる方針は、どういった成果を生み始めていますか。
21年1月1日に東海テレビで新春エリアドラマ「いってきます! ~岐阜・飛騨 古川やんちゃ物語~」が放送されました。また来春にはオール飛騨市ロケで撮影された映画「雑魚どもよ、大志を抱け!」も放映される予定です。監督の足立紳さんは、23年後期のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」の脚本を手掛けられるということで注目されるのではと期待しています。
――都竹市長は「ぎふロケツーリズム協議会」の発起人でもあります。ロケツーリズムの推進やロケ誘致などに関し、他の地域との連携をどのように考えていますか。
映画など映像作品のロケ地に選ばれることで、いわゆる観光地ではないところが一躍脚光を浴びることがあります。私自身も観光資源、地域資源が決して多くない地域でもロケツーリズムは取り組めると感じました。こういう意義を他の自治体に広げたいという思いで、「ぎふロケツーリズム協議会」をスタートしました。
協議会には岐阜市や大垣市、下呂市など岐阜県内13の自治体が参加しています。志を同じくする人や市町村と連携することで、映像作品に取り上げられることの良さを広げることができるのが一番大きいと感じています。そして、それぞれの地域で、飛騨市と同じようにまちの人が自信と誇りを持つことにつながってほしいと願っています。
もう一つ大切なことは、自治体間の連携。私はこれからの時代の自治体連携のあり方は、「足りないところをお互い補い合いましょう」ということが大事になると考えています。
地域連携というのは、良い取り組みをみんなでやろうとか、自分に足らないところをお互いに補おうとか、もっと共に発展していこうという考えの中で成り立ってきます。この協議会が、ロケに限らず自治体間で連携していくきっかけの一つになることも大きな意味ではないでしょうか。
――思い描く未来の飛騨市のロケツーリズムを教えてください。
飛騨市は、外から来た人たちを大事にすることに長けた地域だと思っていますが、観光が産業化するなかで、そういったムードがどうしても失われがちな時代になりつつあると感じています。
こうした時代の流れに対し、ロケで来た人たちを精一杯もてなし、気持ちよく作品を撮ってもらえるよう協力するということを通じて、さまざまな目的で飛騨を訪れる人をきちんともてなす事ができる町に深化してほしいと思っています。
もう一つは、映像作品に我がまちが出ることで、市民に自信と誇りを持っていただきたいと思っています。結果それが、人口減少時代のなかで、地域に活力を与えることに直結するのではないでしょうか。
□飛騨市 おすすめロケ地
飛騨市一押しのロケ地は、自由に動かせる軌道敷と列車がある旧神岡鉄道です。
ここは、足立監督にもとても高いご評価をいただいた場所です。自由に走らせられる鉄道は全国でも本当に数が少ないので、今後も活用していきたいですね。