【特集No.618】第100回記念 全旅連全国大会 SDGsに取り組み、社会へアピール
2022年9月9日(金) 配信
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(多田計介会長)は9月13日(火)、「第100回記念 全旅連全国大会in東京」を開催する。「全旅連SDGs元年 未来の宿づくりに向けて~プラスチックの資源循環と食品ロス対策~」を大会テーマに、省エネや食品ロスを中心としたSDGsへ積極的に取り組むことを宣言し、次の100年への成長につなげる。多田会長と本紙・石井貞德社長が全旅連の歴史を振り返りながら、これからの旅館・ホテルの在り方について語り合った。 【聞き手=本紙編集長・増田 剛、構成=木下 裕斗】
――100年の歴史を有する全旅連全国大会の開催に向けての想いをお聞かせください。
多田:第1回は1922(大正11)年2月4日(土)に、東京で行われました。100年前に全国の旅館・ホテルの皆様が宿泊業の総力を結集したことに、尊敬の念を抱いております。大会は1年に1度開催していますが、2020、21年は、新型コロナウイルス感染防止のため、会場の規模を大幅に縮小し、オンラインで組合員同士をつなぎました。
第100回記念という大きな節目となる今回は組合員が一堂に会し、次の100年に向けて、結束を強めることができるため無上の喜びを感じております。また、会長の任期中であるため、身の引き締まる思いです。
――宿泊業は過去に、特別地方消費税の撤廃や民泊新法、外国人労働者の受け入れなどさまざまな転機を迎えました。
多田:特別地方消費税は1人1回の消費金額に対し、3%の税金が課されていました。全旅連の皆様が政治家の方々などへの度重なる陳情活動や100万人の署名を集めるなど力を結集した結果、廃止することができました。
近年の活動で力を入れている民泊問題については、我われは「民泊反対ありきではない」と主張し、決められたことは受け入れる姿勢を示しながら、「住民や地域の安全・安心」を求める姿勢で旅館・ホテルの立場もしっかりと説明していきましました。
こうしたことをご理解いただき、施行後3年が経った21年に、営業日数を見直す予定でしたが、現状維持となりました。
コロナ禍前の18年には、人手不足問題の解決に向けた外国人労働者の受け入れのために、宿泊業4団体は「宿泊業技能試験センター」を設立。私が初代理事長に就任しました。また全旅連はベトナム政府と人材育成や教育プログラムの開発へ連携していく協力関係も結びました。
――多田会長は全旅連とどのように関わってきましたか。
多田:私は1980年ごろ、ゆけむりの宿 美湾荘に入りました。当時は団体旅行志向が強く、宿にある200畳の大宴会場も毎日稼働していました。
90年代にはバブルが崩壊し、急激に需要が減少しました。私は何度も金融機関に足を運び、経営を維持させ、先代から旅館を継ぎましたが数年でリーマン・ショックが起き、宿が経営破綻の危機を迎えていました。
さまざまな逆境はありましたが、私が今でも宿の経営を続けられているのは、全旅連の組合員の皆様から色々なアドバイスをいただいたお陰です。
――旅行新聞は75年の創刊以降、観光業の発展を目的に、業界専門紙を発行してきました。
石井:創刊当時は、旅行業に向けて情報を発信していましたが、受入施設についてより理解を深めてもらおうと、76年に観光業界で初めて全国の旅行会社に投票ハガキを配布し、ランキングを発表する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」をスタートしました。以降はホテル・旅館だけではなく、観光・食事・土産物施設や観光バス、水上観光船など幅広く業界を盛り上げていこうと事業を育てていきました。今では、観光業界に定着した事業にまで成長しました。
さらに、台湾や中国、韓国など海外でも、旅館の素晴らしさを比べる指針として利用され、毎年の発表を心待ちにされるなど注目が集まっています。
90年3月には、旅行新聞新社が事務局を務める「全国旅館おかみの集い」(全国女将サミット)が始まりました。
「女将のための 女将による 女将の会議」をスローガンに旅館女将の情報交換や、さまざまな課題に向けての勉強の場として実施しております。今年7月には、長野県・軽井沢で第31回全国女将サミットを開催しました。
また、乳がんを患い、術後の痕を気にして旅を諦めてしまう方に、誰の目も気にせず心ゆくまで入浴などを楽しんでもらう社会貢献活動として、2012年に「ピンクリボンのお宿ネットワーク」を発足しました。
宿泊業の皆様には新しい客層の開拓につなげていただくため、毎年シンポジウムやセミナーを開き、さまざまな乳がん体験者や専門家などによる講演を行うなど、受け入れに向けた理解を深めています。
宿の生産性向上について現地で見学会と解説を行うセミナー「旅館経営教室」も開催し、宿泊業の皆様の力になれるさまざまな事業を展開してきました。
――全旅連がSDGsに取り組むべき理由と、宿の課題を教えてください。
多田:SDGsへの注目が世界中で高まっています。このような社会情勢を踏まえ、宿泊業としては日本経済を牽引していくうえで、地球環境を積極的に守り、活動内容のアピールも大切になっています。
食品ロスについては、お客様に1品でも品数を増やすことが宿の魅力とされてきた時代もありましたが、海外から輸入した食品のうち、約60%が廃棄されているというデータがあります。
また、食品ロスはゴミ処理費や、ムダなオペレーションによる人件費など余計な費用を生み、利益の大きな損失につながっています。
このため、全旅連では、長野県などで実施されている「乾杯後30分お酌せず、食事に集中していただく」取り組みなど、有識者からのさまざまな知見も取り入れたうえで、発信していく方針です。
「品数をお客様の希望に合わせ、味にこだわってほしい」とも考えています。おいしいものを提供すれば、お客様に食べていただけます。コロナ禍で、個人旅行が増加するなか、料理の説明の仕方も、残飯の減少に大きく貢献するのではないでしょうか。
石井:おっしゃる通りで、産地直送など料理の魅力を向上させることでも、食品ロスを減らすことができます。……
【全文は、本紙1879号または9月16日(金)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】