海外各市場の回復動向探る JNTOインバウンド旅行振興フォーラム、3年ぶりのリアル開催
2022年9月16日(金) 配信
日本政府観光局(JNTO、清野智理事長)は9月7(水)~8日(木)の2日間、訪日客誘致に取り組む自治体や民間事業者、会員などを対象に、東京都内で「第25回JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」を開いた。3年ぶりにリアル開催となった今回は、海外事務所長による各市場の最新動向や、サステナブルツーリズムをテーマとしたパネルディスカッションを催し、今後のインバウンドや日本の観光振興の取り組みをまとめた。
冒頭あいさつで清野理事長は、「サステナブルツーリズムやアドベンチャーツーリズム、高付加価値旅行をプロモーションの3本柱として、インバウンド本格始動に向けて着実に準備していく」考えを示した。今回のフォーラムにおいても、この3要素を切り口として講演を行っていくとし、「住んでよし・訪れてよしの地域づくりを目指す観光のカタチが、より一層我われに求められる」と強調した。
フォーラム初の試みとして、外部講師によるパネルディスカッションや基調講演を開いた。
パネルディスカッションでは、「これからのインバウンドの重要性と地方誘客による創生/サステナブルについて」をテーマに、カナダ観光局日本地区の半藤将代代表がカナダ観光局の事例を紹介。カナダの事例を受けて、アルパインツアーサービスの芹澤健一社長と、沖縄観光コンベンションビューローの下地芳郎会長が、日本国内の事例やそれぞれの地域においての認識の共有をし、サステナブルの観点から、インバウンドの重要性と地方誘客の必要性について、意見を交わした。
2日目の基調講演では、Adventure Travel Trade Association(ATTA)のアジアディレクターであるハンナ・ピアソン氏を迎えた。同氏は、世界のアドベンチャーツーリズムのトレンドや、日本における可能性について講演を行った。
□各市場の取り組み 豪州・東アジア
豪州市場
豪州市場は国内・海外旅行需ともに順調に回復してきている。訪日旅行についての問い合わせは増えているが、ガイド動向による費用の上昇や自由行動を好む市場ニーズに合わず、予約までは結び付かないケースが多い。一方で、12月~翌年1月には通常時にもどることを期待するFITの旅行者が増えているという。
20~40代はFITや夫婦・パートナー、20~30代は1人旅行・FIT、30~40代は家族・子連れ、50代以上は世帯年収1000万円以上のラグジュアリー層をターゲットにし、それぞれのニーズに合わせて訴求するコンテンツやアプローチ方法を工夫して取り組みを実施する考え。
韓国市場
韓国市場では、無査証や隔離免除が適用されているベトナム、ヨーロッパ、グアム、サイパンなどを旅行先にした旅行商品を中心に売り出している。7月以降は徐々に訪日団体ツアーも増えてきている状況。日韓航空路線は成田、関西、名古屋、福岡、千歳、那覇などが復便している。
韓国市場はリピーター中心の成熟市場であり、訪日経験者がおもなターゲットとされているとして、40代以上の夫婦・パートナー家族層は旅行会社経由、20~30代の夫婦・家族層はFIT化が顕著であるためインフルエンサーを招請しTVでプロモーションを展開。また、若年層向けにSNSを中心とした広告や、LCCの利用率が高いことから航空会社との共同広告を行う方針だ。
台湾市場
台湾市場は、台湾と海外を行き来する団体旅行の取り扱い禁止は継続中で、海外旅行解禁よりも水際措置のさらなる緩和が先決とされている。旅行業各社や航空会社は既に動き出しており、旅行商品価格はコロナ前より3~4割高騰している傾向にある。
コロナ後のキーワードは「個人旅行増」、「体験・テーマ性重視」、「事前・アウトドア」などであるとして、特別感や限定性のあるコンテンツのPRが効果的。新規開業情報や、コロナ後も変わらず楽しめるコンテンツの情報も求められる。
中国市場
中国市場は、依然として厳しい貿易措置を継続し、ゼロコロナ政策を進めている。国内旅行客数は順調に回復しているが、より短期・近場を好むようになる旅行スタイルの変化が見られ、消費額の回復が課題となっている。中国人消費者の海外旅行マインドとしては、渡航希望はあるが、帰国後の「隔離施策」が難点とされている。
今後の取り組みとしては、大手メディアやプラットホームとタイアップしたオンラインプロモーションをはじめ、日本とのライブ配信を取り入れたハイブリットイベントを開く予定だ。