【JATAの道プロジェクト】道標と案内板設置へ、「目利き」の力でコース踏査
日本旅行業協会(JATA)は、東北復興支援事業の一環で、10月24、25日にJATA会員の旅行会社と関係団体を対象に、青森県の階上町と八戸市で、トレイルの道標や案内板の設置でコース整備を行う「JATAの道プロジェクト」を実施した。実際のトレイル体験も行い、旅行会社社員の「目利き」の力でコースを踏査した。
【丁田 徹也】
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「JATAの道プロジェクト」では、環境省が設定した「みちのく潮風トレイル」を活用し、トレイルコースの一部に道標を立てるなど自然環境の整備活動を行う。旅行会社社員が実際のトレイルコースを体験するので、旅行商品の造成の足掛かりにもなる。トレイルコース周辺地域に送客をすることもプロジェクトの大きな役割として期待されている。
主催者の吉川勝久JATA副会長(KNT―CTホールディングス会長)は、階上岳(階上町)で行われた開会式で、「旅行業界の皆さんには隠れた資源を発掘し、磨き上げるという『目利き』の力があるので、この力をもってトレイルコースを踏査し、体験してほしい」と参加者を鼓舞した。
環境省自然観光局の岡本光之国立公園課長は「環境省の現場職員『レンジャー』は地域の人々と一緒に、どういう道を設定し、どういうおもてなしができるかを考えてきた。自然の良さ、おいしい食べ物などを旅行業界の方に知ってもらい、しっかりと発信してほしい」と期待を寄せた。
その後の活動で参加者は各班に分かれ、階上岳のトレイルコースの森林地域に道標を設置した。
地元関係者との意見交換会では、小林眞八戸市長をはじめとした八戸市と階上町の観光関係者が加わった。小林市長は「震災から3年7カ月以上が経ち、ハード面では1つの区切りを迎え、地域のPRが必要とされていたところでこのプロジェクトに選んでいただいた。無料の高速道路も順次開通していくので、色々な旅行商品の造成を期待している」と語った。
2日目は八戸市の蕪島神社からトレイルコース体験。コース案内人には、国土交通省河川水辺緑の国税調査アドバイザーの高橋昇氏が招かれ、種差海岸と周辺の自然について詳しく解説し、参加者は関心を寄せた。
古くからの軍事要塞の名残を見せる葦毛崎展望台から海が間近に迫る種差海岸に沿うコースを歩き、ミネラルをたっぷりと含んだ潮風を感じた。司馬遼太郎や東山魁夷、吉田初三郎など多くの芸術家や文豪が愛した地でもあり、インパクトのある大小さまざまな岩礁や天然芝の光景が広がる。
海岸コース周辺は岩礁や砂浜、芝生地帯など地形の変化に富み、植生も豊かで、四季折々の何種類もの植生を楽しめる。通常は海岸には存在しない高山植物「ニッコウキスゲ」など珍しい植生も見ることができるのも特徴のひとつ。
体験トレイルコースのゴールはJR種差海岸駅。種差海岸駅前ではトレイルコース案内板の除幕式セレモニーを行った。JATAの吉川副会長は「これはJATAと八戸市の最初の共同作業だ。この案内板が30年、50年と皆さんの目に留まるようにしたい」と述べた。小林八戸市長は「皆様に地域を盛り上げていただけて光栄だ。我われも地元のおもてなしで盛り上げ、旅行者に楽しんでいただける体制を作っていきたい」と強調した。
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≪「旅は復興の機会に」、プロジェクトへの期待≫
意見交換会で「JATAの道プロジェクト」への期待を各関係者に聞いた。
JATA
吉川勝久副会長
(国内旅行推進委員長)
旅とは遠くから人が来るもので、全国各地から復興活動に参加できる機会になっている。まずは7年の計画だが、復興や社会貢献、ビジネスなどにつながる総合的なプロジェクトなので、経過を見ながらその後の展開も考えていきたい。
平林朗理事
(社会貢献委員長)
(エイチ・アイ・エス社長)
旅行業界として震災復興のプロジェクトに参画できたことは大きく、我われにはこの地に送客をするという役割がある。HISでは国外であるタイから青森にチャーターを入れる。訪日旅行でもぜひ震災復興の旅行を紹介できるようにしたい。
八戸市
小林眞市長
観光地としての三陸はまだまだ全国的に情報が不足しているので、今回のJATAの道プロジェクトは情報発信としても大きな柱になると期待している。これからは格段に交通のアクセスが良くなるので、資源が豊富な地域を多くの人に見てほしい。
階上町
久保和子副町長
階上町を知っていただける、というのがなによりうれしい。道標を設置していただけたことで町民の機運も高まり、町を大事にしようと活動の幅も広がる。階上町としても、JATAの道を参考に整備を進めていきたい。
環境省自然環境局
岡本光之国立公園課長
トレイルコースを地元の方と我われレンジャーで設定して作ってきたが、これからはお客さんにいかに来てもらうかが大事。プロジェクトの力で地域の良さを広めていただきたい。