日観振、持続可能シンポ開く 修旅で学ぶ意義を説明
2022年10月5日(水) 配信
日本観光振興協会は9月23日(金)、ツーリズムEXPOジャパン2022で「持続可能な観光推進シンポジウム」~SDGsを踏まえた新しい教育旅行の今後に向けて~を開いた。社会で持続可能性についての意識が高まるなか、修学旅行でSDGsを学ぶ意義を説明した。
久保田穣理事長は主催者あいさつで「SDGsを課外活動で学ぶこと学校が増えている。このなかで教育旅行に盛り込むことも求めらてきている。事例など知って知見を深めてほしい」と語った。
基調講演「持続可能な観光に向けた取組と教育旅行への活用」には東洋大学国際観光学部教授の古屋秀樹氏が登壇した。
学習指導要領を引用したうえで、「教育旅行の使命は、社会と自己との関りを見出し、課題を解決することだ。このため、教育旅行のテーマには社会課題を扱うSDGsが最適だ」と述べた。また、学校での事前学習を行うことで、「より理解を深めることができる」とした。
基調発表には日本修学旅行協会常務理事兼事務局長の高野満博氏が「今後の教育旅行の方向性とSDGsについて」をテーマに講演した。
20~22年に改訂される小・中・高校の新学習指導要領で、SDGsの17の目標を含めた持続可能な開発力を身に付けるための教育「ESD」の実施が盛り込まれていることを説明。背景として、「将来、SDGsだけでは解決できない新たな課題が生じる可能性がある。柔軟な対応力を養うため」と説明した。
さらに「教育旅行は学校を離れることで、社会とその課題に触れることができ、ESD教育につながる」と述べた。
次に福井県観光連盟専務理事の坪田昭夫氏が事例発表「教育旅行SDGsを学ぶ体験プログラム」と題して、県内で用意している教育旅行用のプログラムを紹介した。
具体的には、芦原温泉旅館協同組合女将の会などが廃棄する越前ガニのカニがらを肥料にして、育てたトマトを食事の際に提供する「あわら蟹ガラプロジェクト」を紹介。坪田氏は「ゴミの減量や食べ物の大切さを学べる」とアピールした。
ツリーピクニックアドベンチャーいけだ(池田町)では、全長約1㌔㍍のワイヤーで森の中を滑空するメガシップラインを設置。自然に興味を持ってもらい、適度な伐採が生き物にとっても住みやすい環境を整え、土砂災害の危険性低下につながる学習内容としていることをアピールした。
近畿日本ツーリストチームリーダーの中島ゆか氏は、旅ナカで排出する温室効果ガスの減少を目指すカーボンスタディツアーを紹介した。
ツアーでは各生徒が旅マエに、宿泊施設の客室で使わない電気の消灯や、残飯の減少、移動時の自転車の利用などが省エネにつながることを学び、各生徒が旅行中に行う活動をビンゴ方式で記入する。実行できたことに印を付けることで「ゲームとして楽しみながら、持続可能性を学習できる」とアピールした。
最後にはクロストークを実施。高野氏と坪田氏、中島氏が登壇した。モデレーターは古屋氏が務めた。
古屋氏は冒頭、中島氏に実施に当たって苦労した点を聞いた。
中島氏は旅費支出が地域によって差があることを挙げ、地域の助成金の活用や、価格を見直したい考えを示した。
また、「(カーボンオフセットで)手厚いサービスを省略することが、消費者に商品の質の低下だと思われる」と指摘。「業界全体で消費者に理解してもらう取り組みが必要だ」と語った。
坪田氏は深い学習のための仕掛けについて問われ、「紙漉き体験では、職人の話も聞いてもらことで、深い理解につなげている」と話した。
本来の業務を止めて学生を受け入れることについては、「後継者の獲得につながる」と主張した。
コロナ禍での教育旅行の必要性を問われた高野氏は、修学旅行が過去のさまざま事故で、社会から不要とされたことを振り返った。そのうえで、「コロナ禍では、延期したうえで催行し、不要とした学校は少数だった。日本では文化として根付いた。多くの子供は楽しみにしており、人生の大きな思い出となる」と話した。
古屋氏は「教育旅行はプログラムが魅力的であれば、遠くからの集客が見込めるため、競争相手が多い。持続可能性について学べるコンテンツにさらなる特徴を持たせることが次の課題だ」とまとめた。