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ツアーステーション代表・加藤広明氏に聞く

ツアーステーションの加藤広明代表
ツアーステーションの
加藤広明代表

着地の客が発地につながる、情報共有で着地の活性化へ

 愛知県にある旅行会社ツアーステーション(加藤広明代表)は、「犬山おもてなし隊」として犬山城や城下町など犬山の魅力を紹介し、経済産業省の「がんばる中小企業・小規模事業者300社」に選ばれ大臣から表彰を受けた。「着地型旅行」という言葉が先行し、採算や販売・集客の問題などでなかなか定着していかないなか、同社の加藤代表に、着地型旅行への積極的な取り組みや、販路・集客などについて聞いた。
【伊集院 悟】

 ――御社の着地型旅行への取り組みを教えてください。

 着地型旅行には2010年から取り組み、11年に「犬山おもてなし隊」を結成しました。

 まず、着地型旅行を考えるときに、観光協会などが行う着地型旅行と旅行会社が行う着地型旅行を分けて考える必要があります。観光協会などの場合は、地域に人を呼ぶことが大きな目的ですが、旅行会社の場合は民間会社のため、採算が取れるということが最低限必要になります。

 着地型旅行は、それだけで考えると採算は取れませんが、当社の場合は着地型旅行でお付き合いしたお客様が発地型旅行につながるという好循環が生まれています。着地型旅行の数千円ではほとんど利益は出ませんが、お客様もそのことを理解しているらしく「それなのにこんなに丁寧に対応してもらえる」と喜びの声をもらうことが多いです。着地型旅行の安い単価の旅行に参加されたお客様から、その後、当社の得意分野である高額のクルーズ商品(発地型旅行)に申し込みいただいたりしています。

 クルーズ客船の「飛鳥Ⅱ」が名古屋港に寄港した際のエクスカーションを受け、犬山を案内していますが、「犬山おもてなし隊」が港まで行きお見送りをしています。ほかのエクスカーションで見送りをしているところはなく、「エクスカーションでこんなにもてなされたのは初めて」とお客様が船上で感動され、ほかのエクスカーション参加者にも口コミが広がり、クルーズ会社から感謝の電話をもらい、次もまた依頼を受けました。エクスカーション参加のお客様や口コミで広がった方たちからも、今度は発地型の旅行に申し込みいただいています。

名鉄犬山ホテルで犬山の文化・伝統を案内
名鉄犬山ホテルで犬山の文化・伝統を案内

 また、地元の名鉄犬山ホテルと連携し、夕食後の手持ち無沙汰な宿泊客に、ユネスコ世界遺産登録を控えた犬山祭の魅力紹介やからくり人形の披露など、無料で犬山の文化や伝統を案内しています。

 私たちには「犬山もてなし隊」を知ってもらえる機会になり、ホテルには時間を持て余すお客様へのおもてなしになり、「犬山おもてなし隊」、宿泊客、ホテルの三方にとってプラスになっています。その場で着地型旅行の申し込みをいただくこともあり、そういったお客様はその後のリピート率が高いです。

 当社では必ずお礼の手紙を出しています。着地型旅行では、ツアーの終わり方がとても大切で、単価の安い旅行商品であっても、お客様と密な関係を築き人間関係を強固に築いておくことで、その後、当社の得意なクルーズ企画(発地型旅行)へつなげることができます。

 また、直接地域住民から学び体験する城下町再発見の着地型旅行では、地元を丁寧に案内することにより、地元の方からお礼の意味も込めて「旅行はツアーステーションに頼もう」と発地型旅行の申し込みをいただくことも多いです。

 旅行会社の場合、着地型旅行を発地型旅行と分けて考えがちですが、2つをトータルで捉えるのが大切だと思います。着地型旅行で知り合ったお客様を利益の出やすい発地型旅行へつなげるべきです。

 観光協会や宿泊施設なども第3種旅行業を取り着地型旅行に取り組み始めていますが、この発地と着地をトータルで捉え実践できるのは、着地と発地両方を行っている「旅行会社」ならではの強みだと思います。

 ――着地型旅行の販路や集客についてはどう考えていますか。

 当社は㈱全旅主催の地旅博覧会の第3回地旅大賞で優秀賞をいただきましたが、過去の受賞社の半分以上が現在、着地型旅行をやっていないのが現状です。それは販路がなく、集客が困難だからです。このままでは、本当に着地型旅行が名ばかりになり、誰も取り組まなくなってしまうと、大変危惧しています。

 ㈱全旅では「地旅」のホームページを作っていますが、残念ながら当社も含め、着地型旅行を扱う会員に聞いても、㈱全旅HPからの申し込みはほとんどないというのが現状です。

 せっかくあれほどのコンテンツがそろっているのにもったいないです。まずは、㈱全旅HPに着地型旅行商品を掲載する会員に、現状どの程度のアクセスがあり、成約に至っているのかアンケートを取って、どういうHP運営がより良いのか検討してはどうかと思います。着地型旅行は今はまだ小さな市場ですが、WebやSNSをもっと活用すれば、必ずや化ける市場だと思います。

 ――今年2月には、着地型旅行の企画造成に取り組む旅行会社有志の「着地型旅行活性化会議」を開いたそうですね。

 旅行業界にはさまざまな団体がありますが、事例報告や課題などを横断的に議論している組織がないのが現状です。そこで、「着地型旅行活性化会議」を「国内観光活性化フォーラムin和歌山」に合わせて前日に開催。約20人が集まり、着地型旅行の課題や解決策を議論し、成功事例などを情報共有しました。

 当社はたまたま着地型旅行と発地型旅行が好循環を生んでいますが、その成功事例を秘密にする気はありません。同じ㈱全旅の会員で着地型旅行に取り組んでいる人、またこれから取り組みたいと考えている人には、積極的に情報を公開して、皆で共有していきたいと思っています。

 12月12、13日には、観光庁の「観光地ビジネス創出の総合支援」の支援を受けた「観光ビジネス創出 交流会 in知多半島――着地型旅行活性化をめざして」が愛知県半田市で開かれます。後援には、観光庁以外にも、日本旅行業協会(JATA)や全国旅行業協会(ANTA)なども。着地型旅行の成功事例報告と、分科会では「地域に適した着地型旅行商品の販売方法」について議論します。私も参加しますので、皆さんと情報共有していきたいと思います。

 ――ありがとうございました。

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