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「観光革命」地球規模の構造的変化(251) 人手不足と人財育成

2022年10月14日(金) 配信

 

 10月に入ってからコロナ禍が下火になると共に、国や自治体による旅行・観光支援策が本格化してきた。国は「Go Toトラベル」に代わる観光需要喚起策として「全国旅行支援」を10月11日からスタートさせた。国の補助を受ける都道府県は国の要綱に沿いながら地域の事情に応じて実施をはかる。

 また国は10月11日から、1日5万人とする入国制限を撤廃し、従来のツアー客に加えて、個人旅行の受け入れも解禁する。円安はインバウンドにプラスに働くので、外国人観光客の増加が期待されている。長引く苦境で喘いできた旅行・観光産業にとって、ようやく一条の光が射し込んできた。

 とはいえ、旅行・観光産業の人手不足は深刻な状況にある。とくに宿泊業は労働集約型の産業であり、人手不足は致命的結果をうみだしかねない。観光需要喚起策も大切であるが、人手不足支援策も不可欠である。

 北海道の宿泊業最大手・野口観光グループはコロナ禍前の2018年4月、職業訓練校として「野口観光ホテルプロフェッショナル学院」を開校した。

 当初はホテリエ養成の総合ホテル学科のみで発足し、19年に総合調理学科を追加設置。企業内職業訓練校なので、学院生は野口観光の正社員として採用され、高卒並みの給料をもらうと共に、入学金・授業料無償、寮完備(3食付)で働きながら学べ、各種資格を取得できる。学院は野口観光運営の「新苫小牧プリンスホテル和~なごみ~」に併設され、2年間の座学と実習を通じてホテルプロフェッショナルを養成する。

 すでに約120人が卒業しており、野口観光が各地で展開するホテルなどで仕事に従事している。学院長で野口観光会長の野口秀夫氏は「卒業生が他社に移っても宿泊業全体の底上げになる」と述べている。私も学院卒業生が働いているホテルに宿泊したことがあるが、若いスタッフが生き生きと真摯にさまざまな「おもてなし」に励んでいる初々しい姿に接して、心が洗われる思いを感じた。

 旅行・観光産業の根幹は「おもてなし」であり、従業者が心のこもったおもてなしを心掛けておれば、客は自ずとリピートしたくなる。おもてなしの心を大切にして「育てるホテル」をモットーに若手人財の育成に尽力している野口観光のチャレンジを応援したい。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

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