【特集 No.623】バス運転手不足の問題解消へ 就職イベントを通じて求職者支援
2022年11月21日(月) 配信
バス運転手専門の求人サイト「バスドライバーnavi(どらなび)」を運営するリッツMC(中嶋美恵社長、東京都港区)は、バス運転手専門の就職イベント「どらなびEXPO」、バス運転手専門の人材紹介サービスを通じて、バス運転手不足の解消に努めている。これから各地で観光誘客に向けた取り組みが活発化することが予想されるなか、バス運転手不足と高齢化の課題を抱える現状に対して、協会設立5周年を迎えた女性バス運転手協会代表理事でもある中嶋氏に、取り組みについて詳しい話を聞いた。
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□活発化へ〝リアルな場〟を
――バス業界にどのようなカタチで参入されたのですか。
2011年の会社設立当初は、医療・介護業界に特化した人材系の会社でした。ある日、知り合いからバス会社が運転手を採用できず困っていると聞き、バス業界が運転手不足という課題を抱えていると知りました。私は前職では楽天に勤め、楽天トラベルでバス事業に携わっており、その前はリクルートで人材系の仕事をしていました。両社で学んだノウハウを掛け合わせて、何かできないかと話をいただいたのが始まりです。
それからバス会社やバス運転手の状況を色々と調べました。公共交通であるバスの運転手不足を解消することは、非常に急務であり、何とか力になりたいと思い、3年間展開した医療・介護の人材事業からバス事業へと転換を行いました。
――「どらなびEXPO」イベントを主催・運営したきっかけは。
14年に、バス会社とバス運転手の新たななり手をつなぐ場として、バス運転手専門の求人サイト「バスドライバーnavi(どらなび)」をオープンしました。しかし、Webサイトではつなぎ切れない層が一定数存在しており、バス運転手の就職活動をさらに活発化させるためには、リアルな場での就職イベントが不可欠と感じました。
そして翌年に、バス運転手専門の就職イベント「どらなびEXPO」の開催に至りました。それから毎年、東京・大阪・名古屋の3会場で、春と秋の年2回開催しています。路線・観光・高速・送迎バス事業社を満遍なく配し、今年で延べ6千人のバス運転手の新たななり手が来場しました。ブース参画されるバス会社は年々増加し、最近は行政からの参画もあります。また、来場者の約35%が、開催から半年以内に参画のバス事業者に就職されています。
実は、色々な地域のバス会社や協会・行政から、東京・大阪・名古屋の3大都市以外の地域でも開催してほしいといったような、個々のバス会社レベルではなく国を挙げて運転手不足を解消したいというご要望も多くいただいています。
――どらなびEXPOに対する求人側の反応はいかがですか。
来場者へのアンケートによると、毎回路線バスの人気が最も高いです。一番身近というのもあると思いますし、「バス運転手という職業は、路線バスを経験してから高速バス、そして観光バスを運転できる」というイメージを持つ人が多いのも要因と考えています。
以前は経験者を求める傾向がありましたが、今は入社後に大型2種免許取得のために教育するなど、高速バス、観光バスでも未経験者歓迎の会社が増えてきています。もちろん路線バスから転向する人もいるのですが、未経験者でも観光バスにチャレンジする人もいますね。
――最近は女性のバス運転手の活躍を耳にしますが、就職率や就職者の状況を教えてください。
当社がバス業界に参入した14年当時の女性バス運転手の比率は、約1.4%(引用元=15年版「日本のバス事業」)でした。最新のデータでは約2.2%(同=20年度版「交通政策白書」)まで上昇。わずかですが、「女性を積極的に採用しましょう」と言い続けた当社や、当協会(女性バス運転手協会)の地道な啓発活動の賜物であると自負しております。
一方で、バス業界が男性社会であり、女性を積極的かつ好意的に受け入れる雰囲気がまだ足りないのが課題です。やはりバス業界に入って行きにくい、居づらいという声が残念ながらあります。協会の設立当初にいただいた電話で「もっと女性の同僚がいる会社に移りたい」、「悩んでいることを相談したいが、会社の人が男性ばかりで相談できる人がいない」などの声をいただきました。
まずは…
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