緑霞山宿 藤井荘 露天風呂付き客室2室 10月8日にオープン
2022年11月22日(火)配信
長野県・信州高山村温泉郷の老舗旅館「緑霞山宿 藤井荘」(藤沢晃子社長)は、森鷗外や与謝野鉄幹・晶子、菊地寛、会津八一といった文人墨客がこよなく愛した伝統の宿だ。
藤井荘では今年6月から休館や一部客室を閉鎖しながら、露天風呂付き客室の新設工事を進めてきて、10月8日に露天風呂付き客室2室が完成した。
今回、本館1階に新しく誕生した露天風呂付き客室の概要は以下の通り。【山桜】は広さ110平方㍍、ツインベッドルーム(セミダブルベッド2台)・居間・月見縁台に、檜の露天風呂付き客室で、【藤】は広さ158平方㍍、ツインベッドルーム(ダブルベッド+セミダブルベッド)・居間・月見縁台に、プライベート庭園を見渡せる御影石風呂付きの客室だ。どちらの露天風呂からも壮大な渓谷美が一望できる。宿泊は大人のみ限定で中学生から利用可能。
宿泊料金(参考)は1泊2食付で「山桜」が大人1人当たり8万2500円―20万2400円、「藤」が9万9千円―26万4千円(サービス料・消費税込み)。
問い合わせ=☎026(242)2711。
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念願だった露天風呂付き客室が無事オープンした後、同館社長である藤沢晃子女将に、完成に至るまでの経緯を聞いてみた。
「先代社長(亡夫)がずっと『露天風呂付き客室ができたら』と申していたことが、なんとか実現できました。きっかけは主人がヒントをくれたと思っております。それまでは露天風呂付きの部屋は離れの鳳山亭で、と誰しもが考えていました。ただ離れは散策路があるため、散策に出ているお客様との目隠しやプライバシーの関係を散々苦慮いたしました。本館は上階のフロントロビーから見えるため考えることすらなかったです」。
「本館1階の客室前の庭園を主人が亡くなるとき、手入れをしていました。そこの手入れをしていたときに渓谷の木が気になったのでしょう。木を2本伐採し、足を滑らせて滑落してしまいました。亡くなってからは事あるごとに私もその場所に行き、『主人はどうしたかったのだろうか』と物思いに耽っておりました。そんなことを繰り返しているうちに『この場所が良いかも』と感じるようになったのです。本館1階は渓谷の下になるので人気がなく、正直なところ売れない客室でした。でもその1階という立地が露天風呂を作る際に最も作りやすくプライベート感も出せる。そして何より静かな場所でした」。
「そこからはこの建物を40年前に建てた設計士の山本先生に思いの丈を伝え『渓谷の借景を一番のごちそうとした日本文化の香る宿をテーマに、ここに来る理由・醍醐味を訴求した客室を作りたい』とお願いしました。国内はもちろん、海外からのお客様にも日本の地方の魅力を存分に伝えていきたい」と、今後の目標を伝えてくれた。
【古沢 克昌】