韓国初の本格IR施設、セガサミーが韓国企業と建設(パラダイスシティ)
17年上期を予定、中国客の取り込み狙う
セガサミーホールディングス(里見治会長兼社長)と韓国で40年来カジノ運営などを手掛けるパラダイス(チュン・ピルリップ会長)の合弁会社・PARADISE SEGASAMMY(パラダイスセガサミー、チェ・ジョンファン代表理事)は2017年上期に、仁川国際空港隣接エリアに統合型リゾート(IR)施設「パラダイスシティ」開業を予定する。年間旅客数4167万人を誇り、北東アジアのハブ空港と呼ばれる仁川空港に韓国初の本格IR施設を建設することで、マカオやシンガポールへ流れている中国客などの取り込みを狙う。
【飯塚 小牧】
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セガサミーホールディングスは、11月20日の韓国現地での竣工式に合わせ、日本の報道関係者を招聘した。19日には単独で会見を開き、鶴見尚也専務が今回の事業参入の理由を「日本企業として、カジノのノウハウの吸収・蓄積と大きなビジネスの可能性を感じたため」と語った。今後、日本国内でカジノが合法化することも視野に入れ、IR法案が整備された場合、運営事業への参入を表明している。
遊技機業界大手のサミーとゲーム業界大手のセガが2004年に経営統合して誕生した同社は、今後の成長戦略の柱の1つにIRリゾート事業を位置付けており、鶴見専務は「中長期的に最も収益が期待できる」と言及。パラダイスセガサミーへの参画で開発、運営に必要な高度なノウハウを習得することを目指す。パートナーのパラダイスは韓国で長年、カジノやホテル事業などを手掛けており、中国をはじめとしたアジア顧客の取り込みにも高い実績があるという。合弁会社の持株比率はセガサミーホールディングスが45%で、これまでに1429億ウォンを出資している。
また、カジノ市場についても説明。世界では長年、米国が売上高のトップを誇っていたが、近年、マカオやシンガポールに相次いで大型のカジノが開業したことから、アジア太平洋が急成長し、2013年には米国を抜く伸びをみせている。こうしたなか、韓国では1967年に外国人専用カジノができ、2000年に韓国人も入場可能なカジノが誕生。現在、17軒のカジノのうち16軒は外国人専用、韓国人が入場できるカジノは1軒のみだが、売上は16軒の合計と1軒が同規模という。
一方、ビザの緩和や17年オープン予定の仁川空港の第2旅客ターミナル、KTXの開通など交通インフラの整備で、今後、仁川を利用する外国人観光客の急増が予想される。こうしたことを背景に、大人から子供まで楽しめる統合型の大型リゾート施設をつくることで、マカオやシンガポールに訪れている中国人客を中心に、外国人観光客を韓国に取り込みたい考えだ。施設にはK―POPなどの文化を融合させ、カジノだけではない楽しみを提案し、減少する日本人観光客に対してもアピールする。
20日の会見でパラダイスセガサミーのチェ代表理事はパラダイスシティの意義として、韓流文化を取り入れたリゾートを作ることで、仁川を世界的な観光都市に生まれ変わらせることなどを列挙。仁川の3時間半圏内には約13億人の人口があり、これは世界の4分の1にあたることなど地理的な利点も強調した。セガサミーホールディングスとの提携については「ゲームブランドの力や資本力を高く評価している」と語った。
約400人が出席した竣工式典で、パラダイスのチュン会長は「パラダイスシティは韓国を訪れる観光客の新たな目的地となる」とし、「新たな付加価値、雇用、成長エンジンを作り上げる創造経済実現の現場となる」と意気込んだ。セガサミーホールディングスの里見会長兼社長は「北東アジアの中心的な存在として大きな発展を遂げ、韓国の観光産業を牽引するものになると確信している」と期待を込めた。
パラダイスシティは、仁川国際空港国際業務地域の約10万坪に5つ星のラグジュアリーホテル(711室)とデザイナーズホテル(103室)、外国人専用カジノ(テーブルゲーム160台・電子テーブルゲーム388台・スロットマシーン350台)、コンベンション施設、韓流テーマパークや韓流ブランドゾーンなどの商業・文化施設、プレミアムスパを備える。仁川空港から徒歩10分の距離で、空港から運行を予定する鉄道駅と直結するほか、バスも運行予定。第1段階の投資金額は約1兆3千億ウォン。