〈旬刊旅行新聞12月11・21日号コラム〉日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2022――下呂温泉観光協会の「E―DMO」が栄冠
2022年12月11日(日) 配信
2022年が残り少なくなってきた。コロナ禍も丸3年を迎えようとしており、生活様式も無意識のうちに、それなりに対応できるようになった。
しかし、3年経ってもマスク着用を煩わしく感じることが多い。例えば、旅館に宿泊して温泉で温まったあと、まだ汗が引かないなか、再びマスクを着用して客室に戻るときなどだ。
このようななか、星野リゾートが運営する「BEB5沖縄瀬良垣」(沖縄県・恩納村)は12月1日から、マスクフリーでの滞在を可能とした。屋内外が区切りなくつながっている環境にあるため、「十分に喚起できる」との判断からだが、日本の宿泊業界を牽引していく意志と覚悟を感じる。称賛したい。
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本紙4~5面で「2022年の観光業界 本紙見出しと写真で振り返る」特集を掲載しているが、全般的にダイナミックな動きが少なかった年との印象が強い。おそらく来年にはコロナ禍が明け、「虎視眈々とチャンスを狙って準備をしていた雌伏の1年」だったのだと思う。
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また、今号で「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2022」を発表した。「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー」は旅行新聞新社が日々の取材活動などを通じて見聞きした観光業界の取り組みの中から、創意工夫の見られるものを独自に選び、表彰する制度だ。昨年に創設して今年が2回目となる。
グランプリに輝いたのは、「下呂温泉観光協会」(岐阜県)のエコツーリズムの理念を、DMO(観光地づくり法人)にプラスした「E―DMO」による持続可能な地域づくりを選出した。地域や住民の一体性ができ、地域の魅力を“見える化”し、持続可能な発展が期待できる取り組みだ。
優秀賞は、「熱川プリンスホテル」(静岡県)と、「常磐ホテル」(山梨県)の2点。
「熱川プリンスホテル」は、館内にカルチャー教室「ミヂカル」専用のルームを設け、エクササイズ・料理・クラフト・ヒーリング――の4カテゴリーの講座を開き、地元住民や、ホテル滞在者も受講できる仕組みを運営している。
「常磐ホテル」(山梨県)は、「やまなしグリーン・ゾーンプレミアム」初回認証交付に選ばれ、感染症予防対策機器の導入や厳格な従業員教育にも努める。いち早く電気自動車対応システムを導入するなど先進的な取り組みが際立つ。さらに、信玄の湯 湯村温泉街の復活再生に向けた取り組みなどにも着手している。
今年は「特別賞」も設けた。コロナ禍で団体客が激減するなか、「全国運輸観光協会」の旅行会社とバス会社が新たな需要獲得につながる地道な取り組みが高く評価された。
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こうして見ると、約3年にわたるコロナ禍であっても、長期的な視点から持続可能な地域づくりや宿のあり方を決定し、実行している企業や地域が数多くあることに気づかされる。
ちなみに21年のグランプリは、「リーガロイヤルホテル東京」(東京都)が受賞した。コロナ禍で営業休止を余儀なくされた館内施設で、ドラマ撮影などのロケ誘致により、大きな収益を上げた事業を選出した。
3回目となる23年も、きらりと光る観光業界の優れた取り組みを、取材活動のなかで見つけたいと心躍る。そして、年末に大きく発表したいと考えている。
(編集長・増田 剛)