【特集No.625】2023年インタビュー 日本旅館協会・大西雅之会長に聞く 自力で立ち上がる“正念場の年”に
2023年1月1日(日) 配信
全国旅行支援の開始や訪日旅行再開で、コロナ禍の影響を受けた観光業界は回復基調に転じた。政府によって地域一体となった観光サービスの高付加価値化事業が推進されるなど、観光消費額増加への取り組みも加速している。一方、人手不足問題なども生じた。そこで、2022年6月に日本旅館協会の会長に就任した大西雅之会長に宿泊業界の現状と、回復への正念場として捉える23年における業界活性化への想いを聞いた。
【聞き手=本紙社長・石井 貞德、構成=木下 裕斗】
□地位向上へ宿泊単価アップを
――会長に就任した2022年は、どのような年でしたか。
「本当に厳しかった」の一言に尽きます。日本旅館協会が実施したアンケートでは、会員の施設の多くが3月を決算月とするなか、約62%が今期経常赤字となる見込みです。償却前の段階でも約半数は赤字です。結果、20~21年にコロナ禍で抱えた過大な債務に加え、さらに22年も負債が積み増しされている状況です。
さらに、社員のモチベーション低下で、離職者が増加し、人手が足りなく、多くの旅館・ホテルはフル体制で営業できていません。
確かに、22年10月からは全国旅行支援によって国内旅行の需要は増え、コロナ前の業績に近づいています。訪日旅行も再開されたことで苦しい状況から、明るい兆しが見えた年でもありました。地域経済への波及効果もあり、大変ありがたく思っています。
しかしながら、長期間続いたコロナ禍による業界の痛手は想像を絶するほど大きく、日本ホテル協会によると、この間の赤字は会員平均42年分にも及んでいます。
――全国旅行支援は23年1月以降、割引率を引き下げます。
私は全国旅行支援を観光業だけのために実施するものではく、日本経済を活性化する、とくに地域経済のための政策だと捉えています。観光業は他業種への波及効果が高く、地域産業の基盤で、地方活性化には不可欠であると自負しています。
大変残念なことに23年1月10日(火)以降、割引額を減額しながら、都道府県に配分した予算がなくなった時点で終了すると、支援事業のソフトランディング方針が発表されました。今年度末前後まで、長くてもゴールデンウイーク前に終了する見通しであり、このような短期間で終了すると、返済に充てる資金を得る手段をなくす会員も多く、経営を続けられない事業者が続出してしまいます。我われ業界がとくに訴えたいのは、コロナ禍が原因の赤字は、行動制限によるもの。宿泊業の経営の過ちが理由ではありません。
全国旅行支援が終了したあとも、新しい制度を創設してもらえるよう、23年も継続して政府に強く要望します。
日本の観光業が伸長できたのは、訪日外国人観光客が増えたことがおもな要因であるため、今後コロナ禍で負った債務を返済するために、訪日需要が一定の水準に復活するまで、力強く息の長い支援を続けてほしいと強く願っています。……
【全文は、本紙1891号または1月11日(水)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】