観光立国推進協議会が第9回会合開く 「年頭の勢い付け」へ、業界の代表が決意表明
2023年1月18日(水) 配信
観光立国推進協議会(委員長=山西健一郎・日本観光振興協会会長)は1月17日(火)、東京都内で第9回観光立国推進協議会を開いた。観光庁や観光団体、関連企業の協議会委員ら約100人が参加した。
山西委員長は冒頭、今後の活動方針として、コロナ禍からの再起と大阪万博に向けた誘客強化を示した。今回については「各委員の業界における現状や決意表明で年頭の勢い付けをはかりたい」とした。
来賓の観光庁の和田浩一長官は、国内と訪日旅行の需要が回復傾向にあることに触れ、「観光立国の復活に向けて、業界と力を合わせて施策立案に取り組んでいく」と語った。
そのうえで、観光庁の基本的な方向性として、全国旅行支援による需要拡大への取り組みを報告。高付加価値化と生産性向上による収益増加に向けた支援も実施していることを伝え、「人手不足の課題が顕在化するなか、従業員の待遇を改善ほしい」と求めた。
また、サスティナブルに観光したい世界の旅行者が増えたことから、脱炭素型の観光と、地域社会の持続可能性を追求していく方針を示した。そのうえで、「各地で成功モデルを確立し、日本が持続可能な先進地になれるようする」とした。
観光業界の各社・団体からの発言では、はじめに旅行業界を代表して日本旅行業協会(JATA)会長を務める髙橋広行副委員長が登壇。国内旅行が2019年比で8割程度まで回復したことについて、「全国旅行支援などの施策による効果。支援が終了すると回復の流れが途絶えるため、できる限り長期化してほしい」と要望した。
訪日旅行は19年比で約4割まで戻ったことを説明。日本入国時のワクチン3回接種、もしくは72時間前の陰性の証明書の取得が足枷となっていることから、「グローバルスタンダードに合わせて世界と共同歩調を取るべき」と述べ、「新型コロナウイルスの2類相当から5類への見直しを一刻も早く実現してほしい」と求めた。
宿泊業界を代表して日本旅館協会会長の大西雅之副委員長は、国内や訪日旅行需要が増加したが、「協会会員のうち63%が赤字となる見込みで、コロナ禍で負った債務を返済できない」と訴えた。さらに、「会員の約半数はコロナ禍前の収益を得ても、返済期間が80年以上となる。営業継続が懸念される事態となっている」と危機感を示した。
このため、「全国旅行支援は訪日外国人観光客が一定度戻るまで、継続してほしい」と要望した。
人手不足については、会員の宿では平均約11%のスタッフが離職したことを報告。この解決策として、宿泊施設と外国人人材とのマッチング会を実施したが、「状況は厳しいまま。現実に即した法制度を求めたい」と語った。
運輸業界の立場から、はとバス社長の塩見清仁委員は「コロナ禍で我われは大きな傷を負った。このため、全国旅行支援は長く実施してほしい」とした。また、「住所や証明書の確認のほか、クーポンの確認に必要なアプリという概念を知らない客層も多いため、通常よりも案内に時間が掛かっている」として制度の改善を要求した。
また、旅行はコロナ禍で不要不急や敬遠されてきたことから、「我われ業界が国民のマインドの変換に向けた努力が欠かせない」と語った。
□新春交流会に400人 斉藤国交相や菅前首相も出席
同協議会終了後には、日本観光振興協会が幹事を務める観光関係団体懇談会が、2023年観光関係者新春交流会を開いた。約400人が出席。来賓として国会議員約30人も参加した。
日本観光振興協会の山西会長は、全国旅行支援などの支援施策について「国会議員の先生方のお陰。観光立国の復活に向けて一致団結して取り組んでいきたい」と話した。
来賓のあいさつに立った斉藤鉄夫国土交通大臣は、国内と訪日旅行者数が増加したことに触れ、「この機を逃さず国交省は、観光業が日本を支える屋台骨の産業になるように力を合わせていく」と述べた。
菅義偉前首相は「日本には世界に誇る自然や文化、食が備わっている。観光は地方創生の切り札であるため、今年は復活できることを祈念している」と語った。
自由民主党観光立国調査会の二階俊博最高顧問は「観光立国に向けて力を貸してほしい。私も一層奮起して観光振興に取り組む。地域の素晴らしい場所を紹介することを旅行業界の使命として背負ってほしい」と求めた。