〈旬刊旅行新聞1月11・21日合併号コラム〉浅草雷門―― 東京は“強烈な1枚の写真”を獲得
2023年1月20日(金) 配信
2023年がスタートして、もう3週間近くが経った。日本のお正月は、ゆっくりとした時間のなかで、それっぽいテレビ番組を見ながらお節料理やお雑煮を食べ、初詣や初売りなどに出掛けたりするのが一般的なのだろう。だが、最近は正月の過ごし方も変わってきているのではないかと感じている。
とくに若い世代ではテレビを一日中見ながら、お酒を飲んだり、ムダに食べたり、自分のペースではない、型にはまった時間を過ごすことに耐えられない人も多いのではないか。長年そのような過ごし方に慣れ親しんできた私も「だらだらし過ぎている」と、若干の違和感を覚えるようになってきた。新たな年に向けて「何かをしよう」と決意し、とりあえず親しみのある川沿いの散歩道を歩いて、新年の本格的なスタートに備えた。
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1月13日には、旅行新聞新社主催「第48回プロが選ぶ日本の旅館・ホテル100選」をはじめ、各表彰式を東京・京王プラザホテルで開催した。全国の旅館・ホテルや、土産物施設、バス会社、水上観光船事業者などの代表者にご出席いただいた。
観光業界もコロナ禍によって大きく変わってしまった。3年の空白期間にあいさつもできないまま、去られた方もいる一方で、新春の「晴れ舞台」で久しぶりに多くの方にお会いできた。表情も昨年や一昨年と比較して、格段に明るく見えた。
さまざまな賀詞交歓会や新年会も今年は開催されており、ようやく大きな車輪が動き始めたことを感じる。新聞社にとって一番変化を実感するのは、ニュースリリースの配信や、記者会見の案内、取材依頼、そして来社される方々の激増である。昨年末からの大きな傾向であるが、量と質ともにコロナ禍前とほとんど変わらないレベルにまで回復している。
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弊社も昨年末に、忘年会を兼ねて屋形船で美味しい食事とお酒をいただきながら、浅草から東京レインボーブリッジをくぐる隅田川クルーズを楽しんだ。
穏やかな青空に包まれた冬の午後で、デッキに出て東京湾から吹く川風を全身に浴び、たくさんのカモメが寄り付くのをのんびりと眺めていると、東京の別の顔が見えてきた。
下船したあと、浅草の雷門から浅草寺まで続く仲見世通りを久しぶりに歩いた。観光客も多かった。一時期は閑散としていた浅草だったが、活気あふれた風景が似合う。
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インバウンドの完全復活にはまだほど遠いが、浅草は外国人観光客にとって東京観光の象徴的なスポットとなっている。
写真1枚でそれとわかる都市は「世界的な観光地」としての地位を確立している。
例えば、エジプト・カイロはピラミッド、フランス・パリは凱旋門やエッフェル塔、英国・ロンドンはビッグ・ベンや赤い2階建てロンドンバス、米国・ニューヨークはタイムズ・スクエアや自由の女神、イエローキャブが映っていれば、一目で世界中の人々に認識される。
東京は、世界中の人々に1枚の写真で認識される強い絵面がなかった。東京タワーやスカイツリーではない。渋谷や秋葉原でもない。やはり日本らしさを表す浅草の雷門と仲見世通り、そして行き交う人力車が映るシーンだろう。
ようやく東京は文化的な背景を有する“強烈な1枚の写真”を獲得した。期待は大きくなる一方だ。
(編集長・増田 剛)