「ONSEN・ガストロノミーツーリズムコラム」 訪れる人の古里に(11年ぶり再開の只見線)
2023年1月26日(木) 配信
2011年の豪雨で被害を受け、一部区間で不通となっていたJR只見線が昨年10月、およそ11年ぶりに全線で運転再開しました。この間、全国から多くの応援が寄せられ、沿線に住む私たちを後押しいただきました。地元ではその声に応えようと、情報発信や列車に手を振る活動を進めてきました。交流を通じて、自分事として只見線を考える人も増えています。
奥会津に入ると、駅ごとに温泉があると言えるほど、のどかな温泉場が続きます。私は共同浴場の「地元のコミュニティーにお邪魔しながら入浴する」という雰囲気がとても好きです。また冬が長く、保存食が身近にある暮らしが当たり前でした。昔は苦手でしたが、今は季節や思い出も感じられる大事な食材です。
近年、人気のスポットは金山町と三島町の境にある「霧幻峡の渡し」です。線路に沿うように流れる只見川。対岸にはかつて集落があり、舟で行き来していたそうです。廃村で舟の文化は途絶えましたが、奥会津郷土写真家の星賢孝さんが「集落の歴史を忘れないように」と、渡し舟を復活させました。霧幻峡という名前の通り、川霧がたちこめる夏の早朝がおすすめです。
只見線は運転本数が少ないので、一度にいくつもの場所をまわるのは難しい反面、ゆっくり1つの地域で過ごせます。1番の楽しみは地元の方と知り合うこと。訪れた人の第2、第3の古里になっていってほしいと願います。
【只見線地域コーディネーター 酒井治子】