JTB、課題対処で活性化へ 観光産業の復権を目指す
2023年2月6日(月)配信
JTB(山北栄二郎社長)は1月12日(木)、事業パートナーを対象に「JTBグループ・ニューイヤー・パートナーシップ・ミーティング2023」を、東京都新宿区の京王プラザホテルで開いた。リアル開催は3年ぶり。山北社長はこれから「ツーリズム産業が経済を支える番」と示し、「オーバーツーリズム」「人材不足」「DX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れ(日本国内)」の3つの課題を対処し、ツーリズム産業の復権を目指すと意気込んだ。
山北社長は年始のあいさつで2022年のツーリズム産業市場を振り返り、宿泊施設稼働率、国内線の航空座席供給量がコロナ禍前の19年に迫る水準まで回復していると言及した。これから「ツーリズム産業が経済を支える番」との考えを示し、「ポテンシャルが高く、経済効果も大きな産業であるからこそ、ツーリズム産業の活性化によって経済の下支えが十分可能」と力を込めた。
ただし、ツーリズム産業が経済を下支えする前提として、「オーバーツーリズム」「人材不足」「DXの遅れ(日本国内)」の3つの課題への対処が不可欠と訴えた。
オーバーツーリズムについて、山北社長は「コロナ禍前から課題だったが、交流再開に向けてサステナビリティの観点からも取り組みが必要」。この課題に対するJTBグループの取り組みとしては「需要分散の取り組みが有効である。専ら都市型観光の課題であり、地方への需要分散が重要だ」と話した。
具体的には「国立公園の観光の活性化、アドベンチャーツーリズムの推進が有効。結果としてオーバーツーリズムの課題解決に加えて、地方へ回遊していく流れをつくることや、コンテンツ開発に伴う消費単価の向上などさまざまな価値創造が可能」と語った。
ツーリズム産業の人材不足に対して、山北社長は「極めて深刻。運送機関や宿泊施設の稼働率が上がりきれない背景には、オペレーション人材の問題がある」という認識を明かした。「直接的な人材供給、DXによる間接的貢献、中長期的にみると次世代人材の育成も重要になってくる。これらの取り組みによって産業としての持続性を高めると同時に、雇用創出による直接的な経済貢献ができると考えている。また、人材不足が産業全体の稼働率向上の足枷になっており、人材不足の対処はツーリズムの復活に向けて大変重要だ」。
DXの課題に、山北社長は「観光地デジタル化支援」をテーマに掲げて取り組むとして、「観光事業者の経営の効率化に加えて、観光地経営の高度化にも寄与したい」と力を込めた。この課題に対して、観光事業者には入場チケットや体験アクティビティ、ツアー商品などの販売・在庫管理プラットフォームを提供。宿泊施設にマイクロサービスとホテル管理サービスをつなぐ「データコネクトHUB」を、地域全体のDX推進に向けてクラウド型CRM基盤「地域共創基盤」も提供していると紹介した。
最後に山北社長は「交流の復活が社会経済を支え、結果としてツーリズム産業の社会的重要性の認知を高め、産業としての魅力が向上していき、この業界を活用したいという人材を呼び寄せる。こういう正のサイクルを構築し、ツーリズム産業の復権を実現するべく皆さんと23年も取り組んでいく」と締め括った。