佐世保鎮守府資産を活用 黒島と4市町巡る旅形成へ
2023年2月17日(金)配信
黒島観光協会(長崎県佐世保市)は現在、日本遺産に認定された「佐世保鎮守府」の資産を活用した周遊観光の形成を進めている。
高速道路を活用し、鎮守府の構成資産・戦争遺構が残る平戸市、西海市、川棚町と、世界遺産の島・黒島の周遊を促進。23年度は、広域周遊のスタンプラリーなどを計画する。
同協会の進める「新たな歴史を学ぶ旅!!『佐世保鎮守府』を活用したフィールドミュージアム事業」についてまとめた。
1889年、旧日本海軍が「佐世保鎮守府」を開庁、同鎮守府の開庁に合わせ佐世保は急速に近代都市として整備された。現在市内には、日本に残る唯一の長波通信施設「旧佐世保無線電信所(針尾送信所)施設」や、「旧佐世保鎮守府凱旋記念館(佐世保市民文化ホール)」など503の構成資産が点在している。
一方で佐世保観光は「ハウステンボス」と「西海国立公園九十九島(くじゅうくしま)」には一定の集客効果があるが、周辺の観光資源の活用が不十分で、周遊型観光の形成ができていないことが課題として挙がっていたという。
この課題に対し、黒島観光協会は新たな観光の目玉として「鎮守府」の資産と歴史に着目、国土計画協会の「高速道路利用・観光・地域連携推進プラン」の支援を受け、事業を展開。
高速道路を活用することで西海市の「石原岳堡塁跡(佐世保要塞)」や川棚町の「魚雷発射試験場跡」、平戸市の「御崎の砲台跡」など、4市町に点在する鎮守府の構成資産・戦争遺構の周遊を促進し、「日帰り観光地」からの脱却を目指している。
同事業は3年間で完結するもので、2022年度は4市町の魅力を紹介するオンラインツアーを実施、多くの参加者を集めた。
23年度は、広域周遊のスタンプラリーなどを計画する。24年度に謎解きを楽しみながら佐世保鎮守府の近代化遺産を周遊する体験型観光プログラムを展開する。
黒島観光協会の山内一成理事長は、「世界文化遺産『長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産』を構成する黒島の集落と日本遺産『佐世保鎮守府』、両方を巡りに多くの人に来ていただきたい」とPR。
そのうえで、「コース造成だけではなく、ガイドや宿泊の手配を1カ所でできる仕組みも整えたい。そして将来的には、横須賀、呉、佐世保、舞鶴の4鎮守府を周遊するコースの造成に発展させられれば」と展望を語る。
□キリシタンと鎮守府2つの歴史に触れる島
江戸時代後期、平戸藩が入植を認めた際、外海や生月島の潜伏キリシタンが多く移住した黒島。島内には1900年にマルマン神父と黒島の信徒が建設を開始し、2年後に完成させた黒島天主堂があり、今も島民の祈りの場となっている。
同島にはキリシタン関連の歴史に触れられる場所に加え、旧海軍佐世保鎮守府の歴史に触れられる「旧佐世保防備隊黒島東砲台施設」や「旧佐世保海軍警備隊黒島名切砲台跡」などの遺構も点在している。
□南蛮貿易の史実もとに平戸で新グルメ展開
古くから西洋諸国との交流により発展してきたまち、平戸。同市では、南蛮貿易の史実をモチーフにした香辛料とイノシシ肉を組み合わせたご当地グルメ「平戸ジビエ南蛮カレー」を開発、市内4店舗がそれぞれのモチーフ(史実)を基にコンセプトと特徴付けしたオリジナルメニューを展開している。
平戸瀬戸市場内にあるレストラン「シーサイドカフェ」では、ポルトガルをテーマに、ジビエ粗挽き肉を使ったキーマカレーに、同国ゆかりの金平糖やオリーブオイル(唐辛子入り)、海鮮天ぷら、干しブドウを組み合わせたセットが楽しめる。
□佐世保で楽しむ海軍と自衛隊グルメ
佐世保を訪れた際には、旧海軍や自衛隊にちなんだグルメも見逃せない。
旧海軍にちなんだグルメ「海軍さんのビーフシチュー」は、明治時代の海軍レシピ本「海軍割烹術参考書」にある「シチュードビーフ」をもとに、1951年創業のレストラン蜂の家などがそれぞれアレンジを加え提供する。
一方、「させぼ自衛隊グルメ」は海上自衛隊、陸上自衛隊、佐世保海上保安部の部隊の監修を経て秘伝のカレーを再現、トマトの酸味が特徴的な「護衛艦あきづきトマトチキンカレー(ドリーマー グリル&カフェ)」など市内22店舗で提供する。
このほかにも、1950年ごろアメリカ海軍から直接レシピを聞いて作り始めたのがその起源といわれる「佐世保バーガー」や、旧日本海軍にちなんだスイーツ「海軍さんの入港ぜんざい」も味わえる。