日本旅館協会、適正価格テーマにセミナー開く 「単価上げ給与アップを」
2023年2月21日(火) 配信
日本旅館協会(大西雅之会長)は2月9日(木)、東京ビッグサイトで開催された第51回国際ホテル・レストラン・ショーでセミナー「宿泊業における適正価格とは?」を開き、単価アップを促した。
主催者あいさつで、未来ビジョン委員会副委員長の関口征治氏(お宿 玉樹、群馬県・伊香保温泉)は「価格アップによる利益の確保で、給与水準を上げることが業界の地位向上につながる。適性価格に見直す勇気を持ち帰ってほしい」とセミナーの趣旨を語った。
第1部の価格引き上げ成功/失敗事例では、片岡良介委員(びわ湖畔味覚の宿双葉荘)が1月に実施した会員へのアンケート結果を発表。2019~23年1月までに値上げを実施した宿は全体の88%を占めた。
具体的な事例として、高付加価値化の実現で求めていた客層を獲得した宿を紹介。新規客も希望に合った宿に泊まれたことで、顧客満足度も上がり、スタッフには感謝の言葉が伝えられたという。これにより、従業員のモチベーションも向上する好循環が生まれた。
一方、失敗事例として、稼働率の低下や顧客離れなどを挙げた。
片岡委員は「失敗事例は成功より大幅に少なかった。業界全体における単価アップは成果を残せている」と話した。
また、同調査では3年以内に宿泊料金を値上げする予定の宿は92%だったことも報告。値上げ率で最も多かった回答は5~10%。次いで1~5%となった。
時期については「とくに決めていない」が最多。具体的な回答では、3カ月以内が最も多かった。値上げの理由には「新年度を迎えるため」が挙がった。
2位は夏ごろ。「コロナ禍が落ち着き、本格的に需要が戻ることを見越して、従業員を雇い、万全の体制で受け入れるため」という理由も。
なお、高付加価値化事業に参画した宿は約6割だった。
アンケート結果を踏まえ、関口氏は宿泊業の求人倍率がコロナ禍前に戻ったことに触れ、「これまでと同じ給料で人を集めることは難しい。単価を上げて、待遇の改善する時期だ」と話した。自館では稼働率が95%以上となった際に、単価を1000円上げたことを説明した。
さらに、アンケートの評価が5点満点中4・8点以上で3000円上げた宿の事例も紹介した。万が一、稼働や評価が下がった場合は、スタッフが一丸となり再度向上させていく雰囲気をつくっているという。
関口氏は「コロナ禍で団体が減り、個人が増えた。価格決定権が持てる今こそ、セミナーを単価アップのきっかけにしてほしい」とまとめた。
第2部の「価格設定手法/レベニューマネジメント」では、船井総研デジタル執行役員の斉藤芳宜氏が登壇。冒頭、「消費者は想定している価格帯であれば、泊る。常に最低価格を求めていない」と語った。
さらに、「多くの人が繁閑差で価格が変わることを理解している」とし、「稼働率が高い日に絞って、消費者が気にならない程度に少しずつ上げてほしい」とアドバイスした。