【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その23-観世音寺&太宰府天満宮めぐり(福岡県太宰府市) 1300年の歴史を持つ観音様の古刹 学問と文化の天神様の聖地
2023年3月11日(土) 配信
悲しいときや苦しいとき、ここぞという心の拠り所となる神社仏閣が1カ所でもあると、心の平安を招いて、再スタートすることができます。神社仏閣にお参りすることは「心の苦しみや不安を解放し、心を安定させて、浄化する」といわれています。「祈り」とは、私たち人間が心の内と外にいらっしゃる神仏に向かって語りかけるコミュニケーションとのこと。
さて、今回の舞台である観世音寺&太宰府天満宮は、西鉄福岡(天神)駅から太宰府駅まで、特急や急行などで約20分程度という、交通の利便性が高いのです。博多への観光とセットで訪れるにも、最適。
太宰府市は、奈良時代から平安時代にかけて、九州全域を統轄する「大宰府」という役所が設置されていました。かつて太宰府市は、外交や行政の場所であり、文化の中心地でもありました。
西鉄の太宰府駅は、太宰府天満宮の朱色に彩られ、太宰府市の花である「梅」をモチーフにした照明やベンチ、ホームには太鼓橋風の欄干を作るなど、太宰府の世界や歴史を感じさせるつくりになっています。
その太宰府駅から徒歩20分程度で、1300年の歴史を持つ、観世音寺へ到着。観世音寺は別世界に来たような静けさに満ちた、天台宗の古刹です。7世紀後半、天智天皇の発願で、母の斉明天皇のご供養のために創建。以前この地に大宰府政庁があり、学びの施設、外国使節を支える館もあり、そのなかにこの観世音寺もありました。
観世音寺といえば、境内の西側にある戒壇院。「戒壇」とは、修行中の僧に対し、きちんと戒律を守って仏教の学びをしているかどうか、国家が試験を行ったうえで、キャリアとして認めることです。奈良県の東大寺、栃木県の薬師寺、そして観世音寺が「天下の三戒壇」と呼ばれています。
その戒壇院の隣にある講堂は、観世音寺にあたるお堂。内陣の須弥壇には、ご本尊の聖観音立像が安置。別名、「杵島観音」と呼ばれています。観音様は、あらゆる願いを叶えてくれる慈悲深い仏様です。一心に、ご自身の祈りをお伝えしましょう。
最後には、講堂近くの宝蔵にも立ち寄ってみてください。「九州第一の仏教美術の殿堂」とも。宝蔵の2階には、巨大で大らかに私たちを漏れ落ちなく救ってくださるような、仏像がお迎えしてくれます。不空羂索観音、十一面観音、馬頭観音、いずれも5㍍前後の仏像が3体あります。地蔵菩薩、阿弥陀如来、大黒天など大きな仏像も、そろっています。少しの時間、これらの仏像と向き合うことで、心身の落ち着きが取り戻されて、スッキリされるでしょう。
太宰府天満宮は、太宰府駅からすぐ近くにあり、参道では名物の梅が枝餅をいただくのも、お楽しみの1つ。平安時代前期に、「学問や文化の神様」である菅原道真公が中央から、この太宰府へと赴任し、その後、天満宮の神様としてお祀りされました。太宰府天満宮、京都の北野天満宮、山口の防府天満宮を「三天神」と呼ばれています。
参道を抜けて出迎えてくれる「御神牛」と呼ばれる牛の像が、境内に11頭もあります。道真公がお亡くなりになったとき、お亡骸を乗せた牛車を進めると牛が座り込んで動かなくなりました。そこにお墓を立て、お社を建てたのがのちの天満宮です。
道真公は丑年生まれで、牛は天神様のお使いとなり、全国の天満宮で神獣としてお祀りされるようになりました。この御神牛の頭を撫でると知恵が授かり、自分の病気やケガをしているところを撫でたあと、御神牛の同じ部分を撫でると、悪いものが牛にうつって、快復するようです。帰りには、天満宮の隣にある、九州国立博物館で知性のパワーを満喫してみてください。
■旅人・執筆 石井 亜由美
東洋大学国際観光学部講師、カラーセラピスト。精神性の高い観光研究部会メンバー。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。