観光客目線で地元歩き
実家の最寄り駅を起点にした観光パンフレットができたと知ったのは、少し前のこと。住宅地を観光地として紹介する暴挙、いや英断に、ブランド戦略を推進する市の本気も感じられた。昨年末これを手に、10年以上離れた地を「観光客」になって歩いた。
まずは高架駅を突き抜けるクスの木。珍しいので目玉扱いに異論なし。駅から続く水路沿いの桜並木は、元住人として一押しだ。だが知っているのは数えるほど。近所にこんな寺があったのかと、次第にあやしくなる。オチは子供のころに通った模型店。うれしさあまり「これはないやろ」とツッコミを入れた。
「暮らしと関わりがないから近くでも知らない」「自分の生活は別の誰かの観光になり得る」――散歩後のあれこれをまとめると、この2つが残った。
【鈴木 克範】