わが国立公園・温泉地ここに注目 生産者の想いを感じる「感光」へ(三重県・伊勢志摩国立公園)
2023年3月15日(水) 配信
伊勢志摩国立公園は、人が自然と共生し、文化や伝統が醸成されてきた場所です。ほかの国立公園に比べ民有地の割合が非常に高い、公園内に人々が住む珍しい環境だと思います。
伊勢志摩を代表する豊かな食の恵みは、伝統的な海女漁や伊勢海老のプール制などの資源管理に基づいた漁法により守られてきました。また海自体も、山々が国立公園に指定されたことで保護され、豊かさを保ち続けられていました。しかし近年、黒潮の蛇行による海水温度の上昇や栄養塩不足などにより、自然環境と漁業を取り巻く環境が変わってきていて、海女漁のメインとなるアワビは姿を消し、名産の伊勢海老の漁獲も10分の1といわれるほど減少しました。一方で、今まで、伊勢志摩の海では水揚げされなかった南方の魚も良く見かけるようになりました。
こうした状況に対し我われができるのは、「人が自然に寄り添うこと」。人々が食べたいものを漁獲するという今までの漁法ではなく、今獲れている魚をいかに美味しく流通させていくか、今ある自然の環境を理解し、できることに適応していくフェーズになったのだと思います。
観光においても、「地域で今獲れているものでおもてなしする」という原点に回帰する時期が来たのではないでしょうか。風光明媚な景色や美味しい食べ物はもちろんですが、地域に住まう生産者の想いに触れる事で、観る「観光」から感じる「感光」に変われば良いなと思います。
【伊勢志摩冷凍代表 石川隆将】