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「観光革命」地球規模の構造的変化(256) ウクライナ侵攻の行方

2023年3月16日(木) 配信

 日本でもコロナ禍が下火になり、新型コロナの感染法上の位置付けの変更方針が打ち出されて、ようやく人の動きが活発化してきた。

 新聞でも「台湾でいま、北海道があつい」と報道され、北海道旅行が台湾で熱気を帯びていると伝えられている。台湾では長年、韓流ドラマの後塵を拝してきたが、ネットフリックス配信の日本ドラマ「First Love 初恋」が人気を博し、ロケ地・北海道への旅行を後押ししているらしい。

 たしかに今年2月に3年ぶりで開催された札幌の雪まつりでも数多くのアジアからの観光客が訪れ、賑わっていた。日本政府観光局(JNTO)は「昨年10月に水際対策が緩和され、インバウンドが回復傾向にある」と公表している。

 日本観光が回復しつつあることは大歓迎すべきであるが、一方でロシアのウクライナ侵攻から1年が過ぎたにもかかわらず、戦闘は長期化しており、停戦には程遠い状況にある。

 193カ国で構成される国連総会で2月23日に「ロシア軍の即時、完全かつ無条件撤退」と「ウクライナでの包括的、公正、かつ永続的な平和の必要性」を強調する決議を141カ国の賛成で採択したが、52カ国(反対7、棄権32、無投票13)は賛成していない。決議に法的拘束力がなく、今後も戦闘が継続されるのは残念至極だ。

 大国が公然と国際法を犯して隣国に攻め込む蛮行は許容できないが、極悪非道なロシアを即時撤退させることができないのが世界の現状だ。

 ロシアに対する厳しい経済制裁が実施されているが、ロシアは資源大国であり、逆に世界のエネルギーや鉱物価格が高騰している。とくにエネルギー価格の高騰によって世界的に物価高が引き起こされている。併せて食料価格も高騰しており、「グローバルサウス」と呼ばれる途上国では危機的状況が生み出されている。

 ウクライナ有事は必然的に「台湾有事」につながる危険性がある。偶発的なかたちであっても台湾有事が現実化すると、日米同盟に頼り切る日本は中国と敵対することになり、亡国の道を進むことになる。そうなると「観光立国」どころではなくなる。旅行・観光業界のリーダーは常に世界の状況を見極め、最悪の事態を想定しながら、日本観光の未来を考えていく必要がある。

 

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

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