【特集 No.630】太田安曇野市長インタビュー 安曇野のブランド価値高めたい
2023年3月20日(月) 配信
長野県安曇野市(太田寛市長)は、豊かな自然や田園風景を守りながら、「住みたい安曇野 住んでよかった安曇野」の実現に向けて、観光振興にも積極的に取り組んでいる。近年は移住者も増え、「滞在型観光地への転換」を目指している。「市民全体で安曇野のブランド価値を高めていきたい」と語る太田市長へのインタビューとともに、安曇野市との関わりが深い、トラベルキャスターで、NPO法人「ふるさとオンリーワンのまち」理事長を務める津田令子氏にメッセージをいただいた。
【聞き手=本紙社長・石井 貞德、構成=増田 剛】
◇
□滞在型観光地へ転換を
――安曇野市の特徴をお話しください。
安曇野は5つの町村が合併し、2005年に誕生しました。人口は約9万7千人。少子高齢化の中で自然減はあるものの、大きくは減少していません。一方で、転出よりも転入の方が上回る社会増は毎年500人を超えています。長野県内77市町村で、最も社会増が多いのは安曇野市です。
長野県の構造的な問題ですが、地元で通える大学のキャパシティが小さい。このため大学に進学される方の相当数は高校卒業後に県外に行ってしまいます。それを差し引いても年間500人程度、増加している状況です。
――社会増ということは移住される方が多いのですか。
市の西部には、北アルプス連峰が聳え立つ、中部山岳国立公園を有しています。四季折々の自然美に加え、冬は雪の少ない気候、首都圏や名古屋からの交通利便性の良さなど、県内外からさまざまな理由によって、安曇野の自然を求めて移住されます。
モノづくりやアート創作、さらにはゲストハウス経営や、山岳ガイドをされる方も多くいらっしゃいます。
――農業や産業はいかがですか。
農業については、県内で耕作面積が最も多い水田が広がっています。雄大なアルプス連峰の絶景の手前に、水田や縦横に走る農業用水など「人の営み」が見えるところが、安曇野らしい景観の大きな特徴です。リンゴやブドウなどのブランド化にも取り組んでいます。
製造業も県内で上位に位置し、年間5千億円規模の出荷額があり、市民の多くの方は製造業に従事しています。
このようにバランスのとれた市なので、住みやすい街だと自負しています。
――市長が感じる安曇野の魅力とは。
何と言っても山の美しさと、水がきれいなところです。安曇野市の水道水はすべて湧水を使っています。さまざまなアウトドアスポーツが楽しめます。
文化的にも、安曇野のシンボルの1つである碌山美術館をはじめ、博物館や美術館がギャラリーなど小さいものを入れると、30を超えます。
観光客は、コロナ禍前は年間延べ500万人が訪れていました。東京都心や名古屋から車で3時間程度という立地的な利便性の高さを感じていただいています。山小屋もたくさんありますので、夏は登山客も多く訪れます。
また、安曇野はワサビが有名です。お蕎麦屋さんも観光で訪れたお客様がご利用されており、市内の消費額の中で、観光の占める割合はとても高いと認識しています。
公民館活動も活発で、さまざまな文化や芸術活動も積極的に行われています。高齢者も定期的に公民館に集まり、文化芸術に親しむことで生きがいなどにもつながっています。
「住みたい安曇野、住んでよかった安曇野」というキャッチフレーズも定着しているのかなと思います。以前は「あづみの」と読めない方も多くいらっしゃいましたが、全国的にも知名度も上がってきていることを実感しています。
――「安曇野」という響きがいいですね。
北海道には「富良野」、島根県には「津和野」、東京都には姉妹都市の「武蔵野」があります。野の前に2文字ある地名は語感や響きがとても良く感じます。
また、近年は多くのガイドブックにも「安曇野・松本」の順番で名前がつけられております。松本市とは観光面での広域連携がこれまで以上に必要だと考えます。……
【全文は、本紙1897号または3月27日(月)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】