アウトバウンドを19年水準に、本格回復への政策パッケージ策定(和田観光庁長官)
2023年3月20日(月)配信
観光庁の和田浩一長官は3月15日(水)に開いた会見で、アウトバウンドの本格的な回復に向けた政策パッケージを策定したことを発表した。アウトバウンドの本格的な再開を見据えて、イン・アウトを両輪として双方向の交流拡大をはかり、出国日本人数を2019年水準である2000万人への回復を目指す。和田長官は「アウトバウンドはインバウンドに比べて回復が遅れている。業界団体や各国・地域の政府観光局と連携し、一層積極的な取り組みを進めていきたい」と力を込めた。
アウトバウンドの推進について、同庁は「日本人の国際感覚の向上や国際相互理解の増進による諸外国との友好関係の深化をはかるもの。このうえで、双方向の交流拡大を通じて航空ネットワークの拡大、そしてインバウンドのさらなる拡大にもつながる」との認識を示した。
政策パッケージでは、①諸外国との連携体制の強化②戦略的かつ効果的な取り組みの推進③安全・安心な旅行環境の整備・青少年交流の促進――の3つの柱を掲げた。3つの方向性から取り組みを実施するものとして、具体策は日本旅行業協会(JATA)などの業界団体と協議を行ったうえで決めていく方針だ。
1つ目の諸外国との連携体制の強化では、重点国・地域をはじめ各国・地域との連携体制を構築し、アウトバウンド増加に向けた強力な枠組みを整備する。2国家・地域間での海外旅行者数の設定など覚書の締結を推進し、各国政府観光局との総合的・一体的な連携スキームの構築を行う。
2つ目の戦略的かつ効果的な取り組みの推進では、アウトバウンド増加のポテンシャルが高い若者やシニア層を中心に、戦略的かつ効果的な取り組みを推進する。各国政府観光局や旅行会社、航空会社などと連携した特別キャンペーンの促進や、ツーリズムEXPOのさらなる活用、戦略的・効果的な取り組みのためのマーケティング調査を行うとした。
3つ目の安全・安心な旅行環境の整備・青少年交流の促進では、現地情報の発信を通じた安全・安心な旅行環境の整備や、次世代を牽引する青少年交流の促進をはかる。ツアーセーフティーネットによる現地の治安や医療機関に関する情報などの安全情報の発信の強化、参加事業者の拡大や、海外教育旅行のさらなる普及や促進、重点国・地域への送客強化に取り組む。
和田長官は「イン・アウトともに、25年までにコロナ禍前の水準を超えたい」考えを明かした。
□2月の訪日客数148万人、コロナ前77%まで回復
2023年2月の訪日外国人旅行者数は、前年同月と比べて約88倍となる147万5300人となった。コロナ禍前の19年同月比は57%まで、水際対策が続く中国を除くと77%まで回復した。
インバウンドの回復動向について、和田長官は「訪日個人旅行を解禁した22年10月以降、19年と比べた毎月の訪日者数回復率は毎月増加し、堅調な回復が続いている」と話した。今後の見通しについては「3月に中国からの入国者に対する水際措置の変更や国際クルーズが再開され、さらなる訪日客の回復につながる」と期待を寄せた。
一方、23年2月の出国日本人数は53万7700人。同年1月と比べると約1.21倍だったが、19年同月比では約33%と回復には至っていない現状を明かした。和田長官は「円安や燃料費の高騰、そして感染への不安などにより海外旅行への機運が醸成できていないことから3割強に留まっている」との見解を示した。
□「観光再始動事業」、3月中の採択を見込む
インバウンドの本格的な回復に向けた「観光再始動事業」については、1月31日(火)~2月27日(月)まで公募を受け付けた。文化や自然、食、スポーツなど多岐にわたる分野から約1000件の申請があったと述べ、有識者などによる審査委員会で審査を行ったうえで3月中に採択を決定する見込み。なお今後、2次募集の実施も行う予定としている。
和田長官は「同事業を活用してインバウンドの回復、それから地方への誘客をさらに加速して、訪日外国人旅行消費額5兆円の早期達成に向けて取り組みたい」考えだ。