〈観光最前線〉渋温泉の一泊住民
2023年4月1日(土) 配信
先日、長野県の渋温泉に泊まり「一泊住民」を体験した。
温泉街には地元住民が利用・管理する9つの外湯がある。この外湯の扉を開けるカギを宿泊客に貸し出し、住民同様に湯めぐりを楽しんでもらう。「一泊住民」とは、渋独自のもてなしを表した言葉だ。
地域の宝、外湯の扉を開けるカギ。手にすると、大切なものを借り受けたという、よい意味での緊張感と、ほんのわずか、自分の立ち位置が地域の側に近づいた感覚を、同時に覚えた。到着から数時間後、湯に浸かりながら「居心地のよさ」を感じていた。
私事で恐縮だか、「美味しい」「楽しい」には容易に手が届くが、この「居心地いい」を旅先で経験するのは稀だ。ただ「あっち側」と「こっち側」の垣根が低くなった時、そう感じることだけは分かっている。
【鈴木 克範】