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「観光革命」地球規模の構造的変化(257) 地方の衰退と統一地方選挙

2023年4月9日(日) 配信

 4年ごとに実施される統一地方選挙が近づいてきた。日本の各地域はいまさまざまに解決困難な課題を抱えているために統一地方選挙が重要であるが、現実には地方選挙の盛り上がりに欠けており、大いに危惧している。

 今回の統一地方選挙では地方創生の総括が重要になる。政府は安倍晋三政権の下で2014年に地方創生政策を打ち出した。東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力の向上を目指して、巨額の税金を投入して数多くの地方創生事業を実施してきた。

 日本世論調査協会(1950年設立)は統一地方選挙を視野に入れて、地方創生に関する世論調査を実施した。先ず政府の地方創生事業に対する評価では79%が「効果がなかった」と厳しい評価を下している。また「大都市と地方の格差が拡大している」と思う人が84%を占めている。要するに自公政権による地方創生政策については否定的評価が圧倒的多数を占めている。

 日本では既に「2025年問題」が大きな話題になっている。25年にはいわゆる「団塊の世代」が75歳以上になるとともに、583万人の労働力が不足する。日本は世界に冠たる「超高齢社会」のトップランナーになるが、その結果、生産年齢人口の減少に伴う労働力不足、医療・介護分野における人財不足、社会保障費の増大、空き家・マンション問題の深刻化などの解決が必要不可欠になる。

 日本は22年に出生者が初めて80万人を割り込み、話題になった。世界的大富豪のイーロン・マスク氏は今年3月にツイッターで「日本では昨年、出生者の2倍の人が亡くなった」と投稿。昨年5月には「出生率が死亡率を上回らない限り、日本はいずれ消滅する」と投稿している。日本の少子高齢化は今後ますます顕著になるので、国と地方が連携して抜本的対策を講じないと亡国の危機が生じる。

 観光産業は労働集約型産業の典型であり、数多くの従業者を必要としているが、既に労働力不足で苦労している。人財不足対策の一環として、労働環境の改善、健康経営の推進、キャリア形成支援などをはかると共に、AIを活用した技術革新やロボットによる業務自動化なども必要になる。観光業界のリーダーは厳しい現実を直視して、諸々の改革を推進すべきだ。

 

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

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