〈旬刊旅行新聞4月11日号コラム〉―― 「旅行新聞バイク部」活動再開近し 日本の良さを再認識する旅が始まる
2023年4月11日(火) 配信
今年は関東の桜の開花時期がとても早く、もう少し眺めていたいなと思っていた矢先に葉桜へと変わってしまった。これは何も今年だけのことではなく、毎年桜の散る季節には名残惜しさを感じる。一方で、新緑も美しい季節になってきた。
冬の間、半冬眠していたバイクは、バッテリーが弱ってしまっていた。このため、エンジンをかけるために重い車体を日の当たるところまで押して行き、しばらくタンクやエンジンが温まるのを待って、セルを押して念力とともにエンジンをかけるという日々が続いていた。
しかし、さすがにしびれを切らして春先に新しいバッテリーに交換した。あわせて、タイヤの空気も規定値まで充填したところ、眠気まなこのバイクが何やらやる気を見せ始めた。昨夏にはダンロップのタイヤに変えており、今はいわゆる“ツーリング待ち”状態にある。
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春らしい季節は心躍るものがある。昨春はバイクに乗って郡上八幡や飛騨古川、上高地、松本などを巡る1人旅をしたが、今年はどこに行こうかと思案中である。
バイクに乗っている最中は、バイクを見ることはできない。信号待ちの間にせいぜいタンクか、足元に見える剥き出しのエンジン、少し前に突き出したヘッドライト、アナログ式のスピードメーターとタコメーターなどを、パーツごとに眺めるだけだ。
ツーリングに出ると、サービスエリアや道の駅などでしばし休憩したあと、自分のバイクを遠くから眺めるという、新しい視点が加わる。とても小さなことに思われるかもしれないが、ツーリングにおける大きな楽しみの1つといっても過言ではない。
小休憩の間に体の疲れも取れ、心もリフレッシュして遠くから自分のバイクに近づくと、とりわけエンジン周りを中心に、さっきまで走っていた熱が残っている。この余熱が漂う状態が愛おしく思える。空冷エンジンのため、止めたエンジンから発する薪ストーブのような乾いた音も心地よい。
再びエンジンをかけると、滑らかに回る。ロングツーリングの場合、これが何度も繰り返される。そのうちに、バイクに跨ると、メカノイズのような軋み音が鳴るようになる。労わりたくなる瞬間だ。
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泊りがけの旅では「目が覚めたとき、バイクはちゃんとあるだろうか」という不安が強い。車の駐車場の空いているスペースに置くことが多いため、盗難やいたずらが恐い。翌朝バイクと再会するときは胸が高鳴る。
最近はバイク専用の駐輪場を設置してくれている旅館やホテルも増えてきた。なかには屋根付きの車庫が備わっている宿もあり、ライダーの気持ちを理解してくれていると感激する。
昨年宿泊した、飛騨古川の宿では、夕食後に雨が降り出した。気づかずにくつろいでいるとフロントから客室に電話があり、「もし良かったら雨に濡れない場所がありますから、そちらに停めてもいいですよ」と親切におっしゃってくれた。ツーリング中に雨天はつきもので、ベッドの中で夜の間ずっと濡れているバイクのことを想うのもつらいものだ。
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多方面からの期待が大きい「旅行新聞バイク部」もそろそろ本格的な活動再開の時か。日本の良さを再認識する旅が始まる。
(編集長・増田 剛)