【特集 No.632】熱川プリンスホテル つながりの時間と空間を
2023年4月11日(火) 配信
熱川プリンスホテル(嶋田愼一朗社長、静岡県・東伊豆町)は1月13日(金)、旅行新聞新社が取材活動などを通じて見聞きした観光業界の取り組みの中から、創意工夫の見られるものを独自に選び表彰する「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2022」の優秀賞を受賞した。館内にカルチャーサロンなどで活用できるスペースを設け、エクササイズ・料理・クラフト・ヒーリングなどの講座を開き、宿泊者や地元の人の交流の場とした。ミヂカルを通じた持続可能な地域づくりについて、嶋田社長とミヂカル担当の今野一馬氏に話を伺った。
【馬場 遥】
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□宿泊者・移住者・地元の人の縁 ミヂカルを通じた地域づくり
──ミヂカルを発案したきっかけは。
嶋田 新型コロナが感染拡大する前から、当館の施設空間を生かしていきたいという想いがありました。とくに、チェックアウトからチェックイン受付までの時間は宿泊施設にとって空き時間です。この休みのあいだ、時間も空間も持て余していたので、館内施設でゆっくりしていただけるようなスペースやコンテンツを提供することで有効活用できないかと考えていました。
当館は国道135号線の目の前にあり、最寄りの伊豆熱川駅には伊豆急行線も通っている交通の便が良い立地です。また、温泉街の中心に近いこともあり、地元の人や観光客も訪れやすい場所となっています。このことから、宿泊しているお客様だけではなく、地元や近隣の人にも当館が提供するサービスや場所を利用していただきたいという想いがありました。
人口については、東京にほとんど流出するばかりでしたが、ここ数年はリモートワークや地方への移住、2拠点居住する人が増えてきています。こういった人々の受け入れをしながら、宿泊のお客様とともにさまざまな方々にホテルを利用していただいて認知を高め、地域の良さ、人のつながり、交流などを通じて親しみを抱いてもらいたいと考えました。
こうして生まれたのがカルチャーサロン「ミヂカル」です。
──ミヂカルについて教えてください。
嶋田 カルチャーサロン「ミヂカル」は、地域交流と自分磨きをテーマに美と健康、伊豆の食、ものづくり、癒し──など、伊豆にこだわった4つのカテゴリで講座を展開しています。
館内にはミヂカルなどで活用できるスペース「マルチスペース茅舎」(BOUSHA)を設けました。
2022年8月から開始し、最初の3カ月はほぼ毎日1回開講していましたが、23年2月現在は繁閑を考慮した割り振りとし、毎月20回程度にとどまっています。半年間でおよそ150回講座を開きましたが、今後は開催する回数を増やしていくことよりも地域で行われるイベントや季節の行事と連動した内容、当館特有の温泉や景観(日の出や満月・星空)とマッチしてよりパワーチャージできる講座内容に充実させていきたいという想いがあります。
料金は税込2750円からで、各講座で材料費などにより料金が変動します。定員は講座ごとに異なりますが、およそ10~20人です。
講師を務めてくださるのは、地元の方々や移住者、2拠点居住の方などさまざまです。
──移住者も講師を務めているのですね。
嶋田 伊豆の景観や自然の豊かさに惹かれて移住された人は、実は地元の人よりも伊豆の良さが見えているのかも知れません。伊豆を気に入って移り住んでくれた人が多いので、「自分達の経験を通じてさらに交流をしたい」「自分達の持っているもので、伊豆をより盛り上げていきたい」という想いを、我われ以上に強く持ってくれています。
こういった方々に講師を務めてもらうことで、受講者同士がつながり、講師と受講者がつながるような、当館とミヂカルを通してできた人と人とのつながりが今後広がっていければと思います。
──人気の講座は。
今野 一番の人気は「伊豆の食」に関する講座です。海と山の幸にあふれた伊豆とその周辺地域の魅力を実感できるような、地元産の食材を取り入れたものとなっています。
また、ヨガも人気を集めています。ヒーリングヨガ、腸活ヨガ、タイ古式ヨガなど3種類の講座を用意しており、ここではそれぞれ体操やヒーリングなどで身も心もリフレッシュすることができます。
講師の先生のご都合にあわせて講座のスケジュールを決定していますが、人気度合いを考慮しながら組むようにしています。
講座内容については、進めていきたい方向性にあわせてミヂカルの企画をしていこうと、講師の先生と我われで綿密な打ち合わせを行いながら決めています。…
【全文は、本紙1899号または4月17日(月)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】