「提言!これからの日本観光」 快適な「旅行」は荷物(対策)から
2023年4月23日(日) 配信
先日ある大都市の地下鉄で体験したことであるがちょっと気になることがあった。
昼間時間帯で車内は数人の立ち客のいる程度の混み具合だったが、入口のところに外国人観光客とおぼしき人の大型トランクが置かれ乗降が円滑にできない状態になっていて入口付近が混雑していた。
一方、車内を見渡してみると車内シート上の荷物棚(網棚というべきか)にはまったく荷物がなく、空の棚が並んでいた。その後注意してみていると地下鉄やおもな都市の近郊電車でも、荷物棚はいつもほとんど空の状態になっていることが分かった。
たまに書類入れ程度の鞄などの荷物が置かれていることがあるが、これはラッシュ時に立ち客がスマホなどを使ってその情報を読むため、手持ちの新聞紙程度のものを荷物棚に置いて手空きの状態にするためのもので、着席すれば自分のヒザの上に置くまでの一時的なものがほとんどのようであった。
違和感を覚えたのは入口付近の大型トランクで乗降時の混雑が目立つときでも、車内の荷物棚は空でいつもまったくその役割を果たしていないことであった。しかも、このような状況は新幹線などでも多く見受けられた。荷物棚に荷物を置かず通路やデッキに置く人が依然多いのである。トランクにキャスターが付くようになって大型荷物も重量感なく、転がして運ぶ人が増えたことにもよるらしい。
一方、その荷物を車両の荷物棚にあげるのは重さと大きさから1人では困難なことから、このような状態が生じたのだと分かった。
即ち乗客の移動(旅行)に際しての慣習でキャスター付きの重い荷物を自ら携行する人が増えたこと、また荷物棚を使用するような中小の荷物を持って移動していた人は、宅配便の普及でほとんどの人が近距離では、移動の際書類ケース程度のものしか携行しなくなってきたことであった。
車内荷物の置き場所を見直すこと。(近郊電車の場合は荷物棚縮小・廃止も)その代わりデッキ近くの座席を一部外してでも、荷物仮置きスペースを用意する(近距離列車でも)こと。もちろん車内への大型荷物の持ち込みは混雑時には自粛を呼び掛けることも必要だと思う。
このような移動(旅行)に伴う携行荷物事情が、急速に変化してきたことへの対応が急がれる。
持込荷物対策と共に荷物の別送(移動に際して)を極力促進することが必要である。そのための窓口を市内の主要箇所で、関係店舗などに業務委託のカタチで設置(共通の標識掲出、取扱料金なども統一、宅配業者の集配ネットワークも活用)気軽に発受送(場合によっては荷物の保管も)できる統合的な「荷物サービスシステム」を鉄道会社などが、自治体の支援も得て協力して構築することが期待される。
車内混雑緩和は、持込荷物対策がその大きいカギを握っているといえよう。
日本商工会議所 観光専門委員会 委員