星野リゾート・星野代表、訪日の地方分散提案 「京都コロナ前の倍では、ひずみ生じる」
2023年4月24日(月) 配信
星野リゾート(長野県・軽井沢町)の星野佳路代表は4月18日(火)の会見で、インバウンド客数をコロナ禍前の2019年の約2倍となる6000万人への増加を目指す政府の方針に対し、「一層の地域分散が必要だ」と提言した。「オーバーツーリズムを指摘されていた京都や東京などを2倍にした場合、ひずみが生じる」と話した。
19年におけるのべ宿泊者数の80%は10都道府県で占められている。このため、「(日本全体で)約30県への誘客がテーマで、星野リゾートでも力を発揮する」と語った。具体的には「得意とする文化観光に力を入れながら、自然コンテンツを強くすることで、(地域)需要を平準化できる」とした。
さらに、国内旅行の需要は1年間の100日程度に集中していたという。このことから、日本人の大型連休を地域別に設定するなどして年間需要を平準化できた場合、「地方で従業員を正社員化するなど雇用を安定させ、給与を上げることができる」と話した。需要の集中による交通機関の混雑については、「旅全体の満足度が下がる。『混んでいて、高いなら出掛けない』という潜在的な層の需要も逃していた」と指摘した。
□界の定期券販売 予約煩わしさ解消
同日には全国の界ブランドに年間12泊できる界の定期券の第2弾も売り出した。65歳以上の高齢者が全人口の29%を超え高齢化社会を迎えるなか、60代以降の平均の宿泊旅行回数が50代以下に比べて少なくなっていることを受け、70歳以上を対象にヒアリング調査を実施。「アクティブな人が多いが、旅のハードルは計画や予約の煩わしさだった」という。
界の定期券の第1弾が22年4月、約100組限定で発売し、約2カ月で完売したことも踏まえ、第2弾の販売に至った。料金は2人用が60万円。3人用は72万円。70歳以上の人が対象。予約の満足度も向上させるため、専用ダイヤルも用意する。
今回は航空券のほか、空港と宿との往復、観光利用も付いた界のこみこみ旅を新たに売り出した。界 ポロト(北海道・白老町)に年間2泊宿泊するコースや界 出雲(島根県出雲市)や玉造(松江市)にそれぞれ1泊できる商品など4つを用意した。料金は1人16万円(税・サ込)から。
□浅草などに新施設 岐阜県にも初進出
同社は7月31日(月)に、「OMO3浅草by星野リゾート」をオープンする。コンセプトは「粋だねぇ、浅草上手」。最上階の休憩スペースOMOベースでは、床から天井に設置したガラス窓から浅草寺や東京スカイツリーを見ることができる。
24年秋には界 奥飛騨(岐阜県)をオープンする。星野リゾートとして、同県の進出は初めて。豊富な湯量や、飛騨の匠といわれる家具産業の技術で発展してきた歴史と文化を感じられる体験を提供していく。