【特集 No.633】信玄の湯 湯村温泉・常磐ホテル 国際基準の感染対策と高付加価値化へ
2023年4月27日(木) 配信
常磐ホテル(笹本健次社長、山梨県・信玄の湯 湯村温泉)は1月13日、旅行新聞新社が取材活動などを通じて見聞きした観光業界の取り組みの中から、創意工夫の見られるものを独自に選び、表彰する「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2022」の優秀賞を受賞した。「やまなしグリーン・ゾーンプレミアム」の初回認証を受けるとともに、コロナ禍にも関わらず積極的な投資に加え、いち早く駐車場に電気自動車の充電設備も導入した笹本社長に話を聞いた。
□団体客から個人客向けにシフト、EV充電など積極的に設備投資
――初回認証を受けた「やまなしグリーン・ゾーンプレミアム」について教えてください。
始まりは、山梨県の長崎幸太郎知事がコロナ禍による先進的な対策として、全国に先駆けて行った「やまなしグリーン・ゾーン認証」です。これは、県が感染症予防対策に対する独自の厳しいレギュレーションを作り、それに認められた安心・信頼を提供する認証施設の取り組みを後押しするものとなりました。
最初は非常に厳しい認証制度と思いましたが、感染症予防のための補助金も用意されていたことで、県全体として非常に良いカタチで認証施設を増やせたわけです。この結果、「グリーン・ゾーン」認証を受けている県内の飲食店や旅館などの感染症対策の向上にもつながり、全国的にも「グリーン・ゾーン」認証が有名になり、同様の制度を導入する自治体が増えていきました。
そして2022年、山梨県がさらにワンランク上の国際基準の認証制度「やまなしグリーン・ゾーンプレミアム」を始めました。常磐ホテルは、「グリーン・ゾーン」認証自体を県内で最初に取得したこともあり、「グリーン・ゾーンプレミアム」についても最初に認証を取得し、率先して感染症対策に臨んでいます。認証に向けて補助金を活用し、エアロゾル感染対策の高性能な空気清浄機に入れ換えました。
これらに認証されたこともあり、当館に対するお客様のクチコミも、感染症対策に関して非常に高い評価をいただいています。
――コロナ禍になってから施設内の高付加価値化をはかり、積極的な投資を行っています。
高付加価値化はコロナ禍前から考えていたことで、コロナ禍に直面してさらに加速していきました。実は団体旅行から個人旅行向けに、そして高付加価値化に切り替えたいと考えていたので、団体旅行が大幅に減少したことで、個人旅行への切り替えを割り切ることができたのです。
コロナ禍前から、13ブース全42席の個室食事処「曙」をつくり始め、客室もリニューアルして、20年2月にインバウンド向けのベッド付き和洋室10室が完成しました。それから補助金を活用し、全面的に個人旅行向けにシフトさせていくことに成功しました。
高付加価値化で一番大きな変化は、宿泊客全員が個室スペースで食事ができるようになったことです。以前は客室全50室のうち、部屋食の離れが11室、個室食事処「曙」は13室分を収容でき、残り26室分は大宴会場を利用していました。そこで250畳の大宴会場を全面リニューアルし、22年3月に残り26室分を収容できる個人客向け食事処「桜」が完成しました。
これ以外にも客室を整備し、今治タオルや作務衣、化粧品も特別なものを採用。庭園内に22年11月、山梨ブランドの甲州牛を使った高級ステーキハウス「ペントハウス甲州」をオープンするなど、とにかく考えられる高付加価値化は全部やろうと取り組みました。結果として、コロナ禍前より宿泊単価1万2000円のアップに成功しました。
団体旅行を受け入れている石和温泉の「石和常磐ホテル」も、甲州牛をはじめとした山梨の食を味わえる宿にブランディングすることで、宿泊単価を6000円アップ。夕食では、甲州牛のしゃぶしゃぶまたはすき焼き、甲州牛の握り寿司などが付くうえ、朝食に甲州牛の牛丼も選べます。
両館とも特化することで売上が増え、22年後半の宿泊率はコロナ禍前を上回りました。
――社員の教育にも力を入れています。
やはり施設がリニューアルすると、一層お客様は宿泊時のサービス面がしっかりしているかチェックされていきます。……
【全文は、本紙1900号または5月2日(火)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】