津田令子の「味のある街」「いわきの早蕨」――わらび餅のいわき(岐阜県高山市)
2023年5月6日(土) 配信
春の「高山祭」(日枝神社の例祭春の山王祭)から帰ったばかりの友人から、美味しいプレゼントをいただいた。
国内外から多くの観光客が訪れる岐阜県高山市。とくに昔ながらの建物が残り老舗の酒蔵をはじめ、みやげ物屋やカフェも数多く軒を連ねる「古い町並み」は〝小京都〟とも呼ばれ、観光名所として高い人気を誇っている。
街の中を流れる宮川沿いでは、毎朝、地元の農家で採れた新鮮な野菜が並ぶ朝市が立ち、賑わいを見せる。今回紹介するわらび餅の「いわき」は、そんな高山市の古い町並みや、宮川からすぐの場所にあり、1998(平成10)年に高山市上三之町で甘味茶屋として創業した。のちに多くのお客様からのニーズに応え、わらび餅の持ち帰り専門店に転向したのだ。国産わらび粉を使って丁寧に作られるわらび餅は、全国にファンを持つ。
「早蕨」は1パック(300㌘)490円(税込)と手ごろな価格だ。早い日は午前中で売り切れてしまう。大きなパックにたっぷりのわらび餅が入っていて、見るからにお得感が溢れている。
「ぷるんぷるん」とやわらかさと弾力に感動しながら、今いただいている。友人は「わらび餅にとって一番大切なのは水。このわらび餅は高山の水でないと作ることができないらしい」と言う。さらに「いわきのは、大量生産ではなく作れるだけの量を丁寧に作っているので、間違いないわよ」とのことだ。全国発送もしている。早蕨を食べる一番のポイントは冷蔵庫に入れないこと。うっかり冷蔵庫に入れると、白く曇って硬くなってしまうという。あくまで常温のまま食べるのが美味しく食べる秘訣なのだ。
早蕨に、スプーンでいくつか切り込みを入れ黒蜜をかける。そのあと、焦がしたきな粉をたっぷりかけて準備万端。いよいよ口に入れてみた。とろりとして、心地よい弾力がものをいっている。口の中で徐々に溶けていくのがわかる。必ず手に入れるには事前に電話でお取り置きしておくか、オープン前に真っ先に立ち寄ることをおすすめする。
(トラベルキャスター)
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。