国内旅行消費額、コロナ前水準上回る 相互交流・海外人材呼び込みにも注力(観光庁長官会見)
2023年5月18日(木) 配信
観光庁の和田浩一長官は5月17日(水)に開いた会見で、2023年1~3月の日本人の国内旅行消費額は4兆2331億円となり、19年比で0・5%増と初めてコロナ前の水準を上回ったことを報告した。国内・訪日旅行が回復基調に乗るなか、新たな観光立国推進基本計画の内容を基に、持続可能なカタチで観光立国の復活をはかっていく。海外旅行の推進についても日本旅行業協会などと連携し、官民一体で機運醸成に努める方針だ。
5月8日(月)、新型コロナ感染症の分類が引き下げとなり、これに伴って和田長官は就任してからの約2年間を振り返り、「国内外の観光需要がストップした事態に陥り、SARSや9・11を超える、これまで経験したことのない危機だったといえる。観光産業に携わる事業者へ事業を維持していただくための方策を実行し、ポストコロナに向けてどうしていくのかを考え続けた2年間だった」と話した。
観光庁は2025年に向け、持続可能な観光・消費額の拡大・地方誘客促進の3つの戦略を総合的かつ強力に推進していく方針だ。
□日韓相互交流の推進 デジタルノマド集客も
斉藤鉄夫国土交通相は4月14日(金)、韓国の朴普均(パク・ボギュン)文化体育観光部長官と会談を行った。会談では、①相互交流人口を早期に19年のレベルまで回復させることを目指す②両国で地方の魅力について情報発信を強化し、交流を促進する③アクティビティや文化体験など、地域の魅力や青少年交流について情報発信し、地方訪問と未来世代の交流を促進する──などの方向性を共有した。
観光庁では、観光の役割は双方向の交流を通じて相互理解を深めていくこととの認識を示し、「観光は日韓関係のさらなる発展に重要な役割を果たすと考えている。相互交流の一層の拡大に努めていきたい」(和田長官)と話した。
また、政府は対日直接投資推進会議において、人材・資金を取り込むアクションプランの検討を進めている。このなかで、海外人材の呼び込みとして、国内外を旅しながらリモートで働く「デジタルノマド」が日本国内で長期滞在できるように、9省庁が連携して在留資格や税制面、保険の扱いなどを多面的に検討している。
デジタルノマドの呼び込みは、インバウンド消費額の増加にも寄与するものであり、地域経済の活性化にも資するとして、和田長官は、「国内ワーケーションの推進に加えて、関係省庁と連携し、必要な対応を行っていく」考えを示した。
□観光庁が日旅に指導 受託事業の総点検指示
日本旅行がこのほど、全国旅行支援事業の愛知県版「いいじゃん、あいち旅キャンペーン事務局」の運営業務において、人件費を約530万円水増し請求していた。これを受けて、観光庁は、日本旅行に対して事実関係、他の受託業務において同様の事案がないかの調査、原因究明と再発防止策の検討を指示した。
また、5月2日(火)に近畿日本ツーリストによるワクチン委託料の過大請求が発覚した問題とあわせ、日本旅行業協会(JATA)へ協会の全会員に対し受託業務の総点検を行うことや、総点検の結果も踏まえて、コンプライアンスのさらなる徹底に必要な方策の検討を指示した。
和田長官は、「旅行業界を代表する立場の企業がこうした事案に関与することは、業界全体の信用低下にもつながり、大変遺憾」と述べた。
総点検については、「全国旅行支援だけではなく様々な事業を受託していると認識している。一定の時間は掛かると見ているが、可能な限り速やかに実施していただきたい」とした。