test

全国運輸環境協会、感染者搬送の需要獲得 “安心な旅”の環境整備へ

2023年5月20日
編集部:木下 裕斗

2023年5月20日(土) 配信

竹島美香子会長と搬送に使用したバス(消毒済み)

 全国運輸環境協会(竹島美香子会長、東京都新宿区)は、旅行新聞新社が取材活動などを通じて観光業界の取り組みの中から、創意工夫の見られるものを独自に選び、表彰する「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2022」(2022年12月11日発表)の特別賞を受賞した。コロナ禍で旅行会社とバス会社の団体客が減るなか、新たな需要の獲得に取り組んだ。竹島会長に詳しい話を聞いた。

【木下 裕斗】

 ――これまでの活動について教えてください。

 全国運輸環境協会は2014年8月に、全国女性バス運転士会として発足しました。
 当時、男女共同の更衣室やトイレのみ設けられていた事業所が多く、子育てとの両立も難しいなか、女性の労働環境を改善するために、全国の旅行会社やバス会社が情報交換をする場として設立しました。

 会員数は23年5月現在、法人会員60社とバス会社に勤務する個人会員1人の計61会員。主な会員は、全国旅行業協会(ANTA)に入会している旅行会社をはじめ、バス会社やこれらの会社に向けた業務効率システムを開発する企業などが加入しています。

 これまで、6―8人程度の女性運転手によるパネルディスカッションや、パーティーなどのイベントを実施し、改善に努めてきました。イベントには、会員各社から平均50―60人の参加がありました。

 ――コロナウイルスの感染者の搬送事業を展開した理由は。

 日本で新型コロナウイルスの感染が拡大した20年1―2月、旅行需要が減るなかで、外出の自粛を強く求められていた感染者の搬送でバスの稼働率向上を望む声が会員から挙がりました。併せて、会員のスター交通(碓氷浩敬社長、群馬県・大泉町)が20年2月14日、大黒ふ頭(神奈川県横浜市)から、船内での集団感染が確認されたダイヤモンドプリンセス号の乗客を政府の用意した宿泊施設までバスで送りました。

 スター交通はバス会社でありながら、緊急性の低い傷病者を「民間救急」として救急救命士と看護師の資格を保有する従業員が搬送してきたノウハウも有しています。その後、各自治体から軽症者を療養施設まで送迎する業務を委託されています。
 そのようななか、スター交通に要請が集中し、すべての依頼を受けることが難しい状況にありました。これを受け、全国運輸環境協会では、スター交通のノウハウを中心とした感染防止策についての勉強会を10回以上実施。添乗員や乗務員が厳格な感染対策を実施しながら、搬送を行う手順をまとめたマニュアルやチェックリストも作成しました。

 協会では20年1月に、感染者相談窓口を設置。国や各自治体をはじめ、旅行や出張中に感染し、帰宅できなくなった軽症者などの搬送を請け負ってきました。依頼は参画する会員企業10社に振り分け、全15台を稼働させてきました。

 旅行会社は、自治体などからの受注とバスの手配を行っています。バス会社は現場での搬送業務を担います。

 ――感染者の搬送事業における今後の方針は。

 コロナ禍以降の修学旅行では、感染者の搬送用の小さな10人乗り程度のバスを随行できるサービスを展開してきました。

 万が一、学生や教員が旅の途中で感染が疑われる症状を発した場合、病院や自宅など希望する場所へ送り届けます。また、バスの乗務員は感染防止対策を学んでいるほか、随行車両には防護服や抗原検査キット、酸素メーターなどをセットにしたコロナ99セットを搭載していますので、ほかの参加者から隔離して、簡易的な検査を行います。これにより、発症していない学生は、修学旅行を継続することもできます。

 今後は、このサービスを全国の旅行会社に提案することで、コロナウイルスの感染拡大が終息しないなかでも、安心して旅行できる環境を整えたい。利用客が宿泊施設で感染が疑われる症状を発症した場合に、添乗員や乗務員が対処するためのマニュアルも作成しています。

 団体旅行について、感染リスクが高いイメージが定着するなか、隔離の方法や宿の従業員の感染について、不安を覚える宿にこれからも、過度に意識することなく受け入れてもらいたいと考えています。

 ――宿泊施設の入会など組織拡大の予定は。

 これまで、旅行やバス会社の感染対策について、情報交換を行ってきましたが、旅行中に滞在時間の長い宿泊施設の意見も踏まえることで、消費者の安心感を高めたい。このため、今後はホテル・旅館の入会も促す予定となっています。

 また、引き続き労働環境の改善にも取り組んでいきます。現在は、観光業界全体で人材が不足するなか、協会としてできることについて会員から意見や提案をしていただいています。さらに成功事例を募集し、会員間でセミナーなどを通じて、共有していきます。

 同じサービス業であるホテル・旅館に入会していただいた際は、より多くの情報交換を行いたいですね。

 また、観光業界は今後も、環境への配慮など新たな課題を抱えていくでしょう。旅行やバス、宿泊業界などから解決方法を挙げてもらい、業界全体の発展に貢献する協会として、役割を果たしたいと思います。

いいね・フォローして最新記事をチェック

コメント受付中
この記事への意見や感想をどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。