JTB連結、営業益336億円 3期ぶりに黒字に 23年度は人材投資で減益へ
2023年5月29日(月)配信
JTB(山北栄二郎社長)が5月26日(金)に発表した2023年3月期連結決算によると、営業利益は336億3600万円(前年同期は48億8000万円の損失)と3期ぶりに黒字に転じた。売上の回復と構造改革の効果が継続して発揮され、収益力が向上したことが黒字化に大きく貢献したと示した。一方、23年度の営業利益予想は、交流需要の回復に向けた事業開発と人材への投資を拡大するため、134億円となる想定と計画している。
売上高は主に国内旅行の需要回復とMICE、地域交流・BPOが牽引したことにより、前年同期比67.9%増の9779億7700万円と大幅な増収となった。経常利益は同927.8%増の397億3600万円、当期純利益が同5.3%増の299億5800万円と、ともに増益となった。
22年度の業績結果について、山北社長は「上期は新型コロナの第7波の影響を非常に大きく受けたが、下期に入り感染拡大の収束と行動制限の解除で人流が回復した。全国旅行支援に後押しされた国内旅行需要の回復、第3国間のグローバル旅行の復調にも対応。加えて、出版、商事などの旅行関連事業も幅広い領域で収益を拡大した。個人・企業・地域のさまざまな課題ニーズに応える商品・サービスを拡大し、同時に20年から断行してきた構造改革の結果、企業体力と財務基盤が改善した」と振り返った。
部門別の売上高は、国内旅行が3867億3100万円(同121.1%増)、海外旅行が409億円(同1810.3%増)、訪日旅行が147億4900万円(同51.1%減)、グローバル旅行が331億7200万円(同784.8%増)。国内旅行の需要がコロナ前の水準まで回復し、回復途上の国内以外を牽引したことで、旅行事業の売上合計は同125.4%増の4755億5200万円となった。
一方で、旅行事業以外の売上高は同35.3%増の5024億2500万円となり、旅行事業を上回る結果となった。国内・グローバルともJTBの強みを生かしMICEの取り扱いが伸長、企業・地域向け課題解決型のビジネスも増加したことが要因とみている。
また、コロナ禍以降に実現してきた構造改革の効果が継続され、22年度は19年度と比較して約500億円の固定費削減を実現。山北社長は「売上総利益で損益分岐点の低下を実現でき、しっかりと利益を出せる体質に進化した」と説明した。
□23年度の業績予想、成長投資の加速を計画
23年度の業績見通しについては、売上高は22年度比12.8%増の1兆1034億円、売上総利益は22年度と同水準(同0.2%増)の2550億円を想定。売上総利益のうち、旅行領域は国際人流の回復に基づいた増加を計画しているが、旅行以外の領域はコロナ対策関連事業の縮小により減少を見込む。販売管理費は、今後の事業拡大に向けて事業開発・人材投資を加速し、22年度対比約200億円追加の2416億円の経営実行を計画している。この結果、22年度と比べて成長投資の加速による増収・減益となり、営業利益は134億円を想定している。
JTBは23年度の重点テーマを「国際交流の復活と発展」とし、海外旅行と訪日旅行の両輪で成り立つ“国際交流”に力を入れ、復活を目指す。
海外旅行は重点販売方面を設定し、なかでもハワイとヨーロッパに力を入れ、ダイナミックパッケージや添乗員動向ツアー、FITなどのほか、B2B団体旅行などの商品販売の強化をはかる。
一方の訪日旅行は、観光立国推進基本計画と連動した、①ガストロノミー②アドベンチャー③サステナブル④メディカル――の4つのツーリズムを中心に消費額単価を増やす。地方への誘客を行い、そして持続可能な地域づくりを促す計画だ。