「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(149)興味の幅を広げよう 「知る」は創造を生む
2023年6月17日(土) 配信
予約したあるレストランで、食事をする全員が2度、3度「やられた」と感動の声を上げる出来事がありました。1つ目は、案内されたテーブルを飾る花と、各人に向けたメッセージカードでした。
感動の理由の一番は、その花と書かれた文字の「色」にありました。実は、一緒に食事する方から、「古希の誕生日を迎える人がいる」と、前日に連絡があったのです。レストランにその話を伝えたところ、テーブルに用意された花も、書かれたメッセージの色も「紫色」だったのです。
一般的にお祝いで行われるのは、ローソクを灯したデザートプレートに、チョコレートでお祝いのメッセージが書いて提供するのが定番です。もちろん、うれしい演出ではありますが、多くの飲食店やさまざまな機会に行われ、大きな感動を得るのが難しくなっています。
しかし、そのレストランがさりげなく、それでいて特別なお祝いのために手間を掛けてくれたことを、本当にうれしく思ったのです。ご存知でしょうが、「古希」を祝う色は紫です。
私はレストランへ連絡したあと、すぐに百貨店へプレゼントを買いに行きました。講演も多い方なので、ネクタイが良いと思い、百貨店のスタッフに「古希のお祝いにプレゼントしたいのですが、どの様なものが良いですか」と聞くと、「好みは人によって違いますので」とそっけない返事。「古希の色って紫ですよね」とさらに尋ねると、「ちょっと調べてみます」とネットで確認していました。還暦の祝いと比べると、確かに古希の問い合わせは少ないのかもしれません。
2つ目の感動は、最後のデザートで提供されたハーブティーでした。濃いブルーの美しい色をした「バタフライピー」というハーブティーでしたが、添えられていたレモンの汁を入れると、ブルーが紫色への変化するのです。
レモンなど酸性のものを加えると、化学反応を起こして紫色へと変化するハーブティーです。最大の感動は、メイン料理に盛られていた野菜でした。紫色の野菜がいくつも盛り付けられていましたが、私の電話を受けて、当日の朝に市場で紫色の野菜を仕入れ、料理して提供してくれたのです。お客様の情報から、「古希」を祝う色が紫だと調べ、数多くの演出をしたのです。
情報を早く得られれば、事前に調べて感動を演出することができるようになります。ただ、情報があっても、古希を祝うための色があることを知らなければ、こうした感動を創造できません。当たり前の演出を進化させるには、もう少し幅広く「知っていること」を増やすことが大切です。
コラムニスト紹介
西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。