旅行をより安全に、対策、対応の見直しを(旅行安全マネジメント)
観光庁は2月24日、東京都内で「旅行安全マネジメント普及セミナー」を開き、旅行業関係者を対象に旅行先での事故防止策や事故対応の見直しを促した。
「旅行安全マネジメント」は旅行者の安全を確保するために、2013年12月に日本旅行業協会(JATA)が運輸安全マネジメント制度を参考に策定したもので、事件・事故を起こさせない仕組みや起きた場合の被害を最小限に抑えるための対応を提言している。セミナー当日は、「旅行安全マネジメント」に同庁が補足を足した冊子「旅行業界のための旅行安全マネジメントのすすめ」を配布。冊子には安全管理責任者の設置や連絡体制の構築などが記載されている。
第1部のセミナーは、JATAの越智良典事務局長が旅行安全マネジメントの取り組み例として、PDCAサイクルを基準にした「安全管理責任者の設置」や「自主点検チェックの実施」などを説明したほか、最近問題となっているテロ関連にも触れ、外務省発表の渡航危険情報で、危険度を示す4段階の下から2番目「渡航の是非を検討してください」以上の地域でのツアー催行には、旅行会社の慎重な判断を求めた。「他社が当該地域でツアーを催行しているから自社でもできるという判断は危ない。自社にリスク処理能力がない場合は、事件が起きた場合に間違いなく会社が潰れる」と強調した。
第2部では海外での重大事故支援やリスクマネジメントなどを取り扱う日本アイラックの国原秀則社長が近年発生した事件・事案の対応事例を紹介し、旅行会社としての事故への適切な対策・対応例を説明。「保険に入っていない渡航者は意外と多く、事故発生後には必ずといっていいほどクレームがくる。対策として事前に保険の加入意思がないことを確認するチェック欄をツアー申込用紙に追加することをすすめる」と語った。事故が発生した際のマスコミ対応についても触れ、「マスコミ対応する場所を用意せずに社内にマスコミを入れ込むと、事故処理に支障が出るほか、社内情報が漏れる可能性もある」と述べ、事故発生時の準備の必要性も訴えた。また、「最近では、ツアーの途中から行方不明になる人が多く、無事発見されるまでに大きな問題になっている」と事故データ上には出ていない事項にも注意を促した。
セミナーに参加した旅行会社勤務の欧米方面手配責任者は「当社にも対策マニュアルは存在するが、行方不明者にフォーカスした内容はなかった。これからマニュアルの見直しや社内でケーススタディを進めていきたい」と語った。