農協観光連結決算、当期損失6億円に 債務超過は解消へ
2023年6月28日(水) 配信
農協観光(清水清男社長、東京都大田区)が6月27日(火)に発表した第34期(2022年4月1日~23年3月31日)連結決算によると、当期純損失は6億8662万円(前期は16億7029万円の損失)を計上し、赤字幅を縮小させた。喫緊の課題だった債務超過は、第三者割当による優先株式の発行や引き受けなどで解消。23年度は既存事業であるJA活動支援事業の回復と、確実に需要のある首都圏市場やWeb市場の開拓を中心に取り組むとした。
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取扱高は前年同期比118.1%増の185億3053万円、売上高は同175.7%増の76億3046万円、営業収益は同89.8%増の25億8851万円と大幅に増加した。経常損失は6億6305万円(前期は23億7044万円の損失)と約17億円の圧縮で、当期純損失は6億8662万円(前期は16億7029万円の損失)と約10億円の圧縮。黒字転換には至らなかったが、同社は「23年度は2カ月連続で事業目標を達成している」との回復基調の継続を明らかにした。
事業報告では、前期に策定した事業継続計画に基づき、最小限の事業体制で開始。年間を通じて旅行需要は回復基調にあったが、個人・小グループからの受注が進み、同社事業の核となる団体企画旅行の全面的な回復までに至らなかった。
一方、同社は旧来の旅行事業に限定せず、日本航空(JAL)と業務提携を結び、23年度からの事業化に向けた実証実験を開始。愛知県豊川市に農福連携事業の5つ目の作業場(農福ポート)を開設するなどの取り組みを進めた。
経営面での喫緊の課題としていた債務超過の解消については、23年2月の臨時株主総会で第三者割当による優先株式の発行が承認。全国農業協同組合連合会や全国共済農業協同組連合会、全国農協観光協会などの引き受けにより、3月30日に解消されたと報告した。
23年度の事業では、既存事業であるJA活動支援事業の回復と、確実に需要のある首都圏市場や個人宿泊向けのWeb市場の開拓を中心に取り組む。JA活動支援事業として、旅行やイベントの実施の可能性が高まると想定して需要喚起に資するさまざまな企画提案を行う方針だ。また、Web宿泊システムの導入により、申し込みから清算処理までの簡略化やSNS(交流サイト)発信によって、若い世代の顧客獲得に努めていく。
このほか、4月にJALとの業務提携で「JJエリアセンター但馬」を兵庫県豊岡市に開設し、全国6カ所目となる「農福ポート横浜北事業所」を開設。農業と福祉の課題解決に企業の雇用する力を活用するビジネスモデル「Nツアー農福連携事業アグリンピア」を促進していくとした。
□取締役を補欠選任へ、監査役はすべて再任
同日に東京都千代田のJAビルで23年度定時株主総会を開き、取締役1人の補欠選任と監査役4人全員の任期満了による選任を行った。取締役はJA全国女性組織協議会の中川苗保子氏が新任、監査役は全員再任した。
農協観光の櫻井宏会長は冒頭あいさつで、喫緊の課題だった債務超過を解消できたと報告し、全面的な回復に向けて「1日も早い自立的な復活へ向け、歩みを進めていきたい」と話した。