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「観光革命」地球規模の構造的変化(260) 男女不平等と観光産業

2023年7月9日(日) 配信

 スイスのシンクタンクWEF(世界経済フォーラム)は先日、世界各国の男女平等度を示す「ジェンダーギャップ指数」の最新版を公表した。WEFは2006年から毎年、政治・経済・教育・健康の4分野で国別の男女格差を数値化し、順位付けを行っている。

 政治では国会議員や閣僚や行政府首長の男女比、経済では労働参加率や勤労所得、管理職の男女比および同一労働における男女の賃金格差、健康では出生時の性比や健康寿命の男女比、教育では識字率や教育就学率の男女比など。

 日本は総合ランキングで146カ国中125位。先進国では最下位、全体でも底辺近くだ。女性が大活躍している北欧諸国などが最上位を占めた。アジアでは、フィリピン16位、シンガポール49位、ベトナム72位、タイ74位などが上位。日本は韓国105位、中国107位よりも下位。

 現在の日本が抱える最も深刻な課題の1つは少子化であるが、その大きな原因は男女不平等にある。女性の平均賃金は男性の約7割、しかも非正規雇用は女性の方が多い。非正規の場合、出産後の離職率が高いために出産・離職後にシングルマザーになれば貧困に陥る可能性が大。要するに出産は経済的なリスクとなっている。

 そのため日本の若い世代は結婚や出産をためらいがちだ。安定した雇用が少なく、男尊女卑的文化が残る地域から女性が都市部に流出し、賃金が上がらない日本からチャンスを求めて海外への移住が増加している。

 6月下旬に栃木県日光市で先進7カ国(G7)男女共同参画・女性活躍担当相会合が開催され、賃金格差など経済面での男女不平などの解消が喫緊の課題だとする共同声明が採択された。また女性の就労分野を広げ、労働移動を促すため、デジタルなどの成長産業に参入できるように教育やリスキリング(学び直し)の機会を増やすことも提言された。

 観光分野は、女性が大活躍できる領域である。しかし、現実には低賃金の非正規雇用が多く、コロナ禍の際には真っ先に雇い止めされ、不安定な雇用が常態化している。観光立国が推進されるなかで、観光産業は率先して男女不平などを無くし、女性が安定した雇用と収入を得ることができ、安心して子育てができる環境の実現を真摯にはかるべきである。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

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