test

「提言!これからの日本観光」 「逆境(?)観光」(心の観光)

2023年7月17日
編集部:木下 裕斗

2023年7月17日(月) 配信

 「鉄道友の会」の会合に出席するため青森県五所川原市を訪れる機会を得た。私の訪れた日はたまたま雨であったが、路傍には除雪された雪が積み上がっており、厳しい北国の冬を思わせる情景に接した。この地域は、このような厳しい冬を逆手にとって、さまざまなアイデアを出して観光客を誘致することで注目されてきた。いわば「逆境観光」とでもいえようか。

 例えば、当地の冬の厳しさを象徴するのは“地吹雪”という気象現象である。降り積もった雪が北からの強風に煽られて、吹雪のように舞い上がる。一瞬、周囲のものが真っ白に見える状態となるほど景観が一変する。

 これを体験する「地吹雪ツアー」を旅行会社と地元観光関係者などが企画して、冬のユニークな観光資源として話題になったこともある。

 観光は日常生活の場を離れて、非日常体験を味わう行動とされるが、このような日常体験できない異常な気象のなかから新しい魅力を見出すことも、確かに「観光」というにふさわしいと思う。この「観光」を通じて我われは季節の移り変わりに直接、接することができるからだ。

 厳しい体験ではあるがそのなかから直接、大自然に接する得難い体験ができる窮極の「観光」でないかとも思う。このような寒冷な降雪地域の人たちは厳しい冬を過ごすためにさまざまな工夫をしてきた。

 寒いときには、囲炉裏の火を囲んで暖をとりながら、談笑に時を過ごすことによって、冬の暮らしに彩りを添えることもその1つである。

 冬の「観光」のなかでこのような寒冷地の人たちが、永年の経験のなかからつくり出してきた「暖炉」を囲んでの楽しい人々の輪に参加する真の「観光」も盛んになっている。

 そこには特別な造作もまた演出もない。囲炉裏(暖炉)の傍で集まって地域の人とのコミュニケーションを深め、地域の雰囲気を味わうことがその目的となる。

 これによって、観光客の心に地域の人々の心に触れる温かみのある冬の心の「観光」が心証に残るのではないだろうか。特別な景観や名所、旧蹟などのほか、このような心の観光資源ともいうべき地域のぬくもりに参加することこそ北国の真の「観光」ではないだろうか。

 特色ある風物を持つ地域を訪れ、地元の方々から、その地の特色・魅力などの話を聞く。地域の魅力を深く味わうため地元の方々との対話を通じて地域の特色・魅力を話し合う場を作り、それに参加して心の観光を完結させる。

 そのような対話による交流(具体的には観光を考える地域での集まりに参加する者)の場を作ることも厳しい気象条件で戸外の観光が限られる時期にあっての「観光」の1つの趣向なのではないだろうか。

 北国の民鉄の努力によって運行されているストーブ列車への乗車は、私にとって心に残る旅となった。

 

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

いいね・フォローして最新記事をチェック

コメント受付中
この記事への意見や感想をどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。