「フィンランド式サウナ」を参考に 「温泉文化」無形文化遺産の早期登録へ提言まとめる(日本温泉協会)
2023年7月18日(火) 配信
日本温泉協会(笹本森雄会長)はこのほど、「温泉文化」に係るユネスコ無形文化遺産への早期登録に向けて、「フィンランド式サウナの伝統」を参考にした提案書を準備することや、法的保護措置については、文化財保護法によるもの――などとする提言をまとめた。専門家や有識者らで構成される「同登録に向けた検討会」(座長=青柳正規・元文化庁長官)が今年4月28日、5月15日に会合を開き、登録に必要な「温泉文化」の定義づけや、法的保護措置などの議論を重ねてきた。
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定義づけについては「温泉文化は、『自然の恵みである温泉を通して、心と体を癒す、日本国民全体の幅広い生活文化』である。ユネスコ無形文化遺産への提案に当たっては、先行事例である『フィンランド式サウナの伝統』を参考にユネスコに向けた提案書を準備すること」としている。
「国民全体に広がる、生活に不可欠な文化」という点で、フィンランド国民のサウナ文化が、日本国民の温泉文化に親和性が高いと判断。そのうえで「国民の誰もが納得し、共感するストーリーづくり」を求めている。
法的保護措置については、まずは文化財保護法(登録無形文化財)によるものとすること――とした。
ユネスコ無形文化遺産登録には、国内法での保護が条件となる。同検討会では、温泉法や新法など、あらゆる案を検討。このなかで実現性や迅速性などを勘案し、「文化財保護法での保護を目指すべき」と結論づけた。
文化財保護法は2021年に改正され、新たに「無形文化財」と「無形民俗文化財」に登録制度が新設された。
無形文化財の登録には、「定義・わざ・担い手」の特定が必要で、日本全国の温泉地や旅館・ホテルなどを対象とした悉皆調査や、国民向け意識調査などの実施も視野に入れる。
一方、無形民俗文化財の登録は、日本全国にある温泉にまつわる風俗・民俗を1件ずつ特定し、登録を進め、最終的にはグルーピングして目指すことが想定される。また、複数の文化財登録が必要となり相当な時間を要することや、対象の温泉地が限定されてしまうなど課題も多いため、無形文化財としての登録が望ましい」としている。
提言では、「温泉の文化的価値を見つめ直し、温泉地で働く人々の誇りと希望を一層強く、大きくしていくことを期待する」と登録の意義を強調する。今後は、温泉文化に関する積極的な情報発信に努め、国民全体の機運を醸成していく考えだ。