訪日客コロナ禍以降、単月で初の200万人 地方誘客へ取り組み加速(JNTO)
2023年7月31日(月) 配信
日本政府観光局(JNTO、蒲生篤実理事長)は7月26日(水)に開いた会見で、訪日外国人旅行者数が、コロナ禍以降の単月で初めて200万人を超えたことを報告した。1~6月の上半期では1000万人を突破。一方で、高付加価値旅行者の訪問地域が東京などに集中していることから、中山理映子理事は、「地方誘客・消費へ向けた取り組みを加速する必要がある」と力を込めた。2023年6月の訪日外客数は207万3300人で、19年同月比の72%まで回復している。
エリア別外客数の回復傾向をみると、最も回復率が高いのは米州・豪州で、19年を上回る25・5%増。次いで、東南アジアが同4・6%減。中国を除く東アジアが12・2%減、欧州・中東が18・2%減となった。
中山理事は、「地方誘客の課題の原因として、地方宿泊数が多かった東アジア市場の回復の遅れが影響していると考えられる。東アジアから地方空港への直行便が回復すれば、地方部への誘客が加速する」と話した。
□訪日マーケティング戦略 ターゲットのデータ整理
観光立国推進基本計画において、主な目標として、2025年までに訪日外国人旅行者1人当たりの旅行消費額を、19年比25%増の20万円としている。また、訪日外客1人当たりの地方部宿泊数を2泊にすることを目指している。
なお、23年4~6月期の1人当たり旅行支出は20万5000円と推計され、既に目標値を達成しているが、「今後、マスツーリズムが回復するにつれ、全体的に支出額が下がっていく可能性がある」(中山理事)とみている。
JNTOでは、基本計画を踏まえて、持続可能な観光・消費額拡大・地方誘客促進の実現に向け、きめ細やかにプロモーションを展開するための戦略を策定した。市場別・市場横断・MICEの3部構成とした戦略は、23~25年度で実施される。
市場別マーケティング戦略では、各重点市場について、旅行者のアンケートデータや海外事務所の知見をもとに、「消費額が大きい」「地方での宿泊の可能性が高い」「一定程度の人数が見込める」セグメントをターゲットとして設定した。
これらのターゲットを参考にすることで、地域の「強み」に合うターゲットの絞り込みを可能とし、効果的な受け入れ態勢整備の実現や、プロモーションの効率化、新たな地域間連携などが見込める。
市場横断プロモ―ションでは、長期滞在が期待できるアドベンチャートラベルに着目。21年に北海道で開催予定だった「アドベンチャートラベルワールドサミット2023」(ATWS2023)が9月11(月)~14日(木)に再び北海道でリアル開催されることから、「日本をATデスティネーションとして世界にアピールできる絶好の機会。点ではなく面でコンテンツをそろえていく」(JNTO)とした。
MICEマーケティング戦略では、国際機関や業界団体との連携を強化する。国際会議とインセンティブ旅行の誘致に、積極的に取り組む。
また、25年の大阪・関西万博に向けては、近隣の中国や台湾のほかにも、万博開催経験のある米国やイタリア、ドイツ、中東などをターゲットに据えた。