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【観光庁・タビイチ】新しい観光地づくりを、“資源なくとも工夫次第”

観光庁・山口次長
観光庁・山口次長

 観光庁は2月26―27日、新しい観光地づくりを支援する事業「タビの産直イチ」(タビイチ)で造成した観光企画の商談会を東京都内で開き、26日にはとくに優れた地域を表彰した。新たな観光資源創出に取り組む地域を紹介していく。
【丁田 徹也】

 事業の流れとして、まず「タビイチ」の前事業「日本タビカレッジ」で、観光地の再建・強化を目指す78観光地がモニターツアーや地域情報の発信。その後、より実践の場を目指す45地域が「タビイチ」で観光地の魅力開発や旅行商品化を推進した。対象者を絞ったニッチな企画や、ソフト面にこだわった観光地づくりなど既存の観光地づくりに見られない新たな要素を駆使した事業が見られた。

水口ニューツーリズム推進官
水口ニューツーリズム推進官

 観光庁の山口由美次長は「訪日観光は好調だが、ゴールデンルートなど限られた市場でのみ活気がある。国内旅行も依然として厳しい状況。資源を世界に発信できる観光地域を作り、国内外の旅行者を津々浦々に向かわせてほしい」と鼓舞した。

 同庁観光資源課ニューツーリズム推進官の水口幸司氏は「観光資源を持たない地域でも工夫次第で魅力的な観光商品ができる」と事業を総括し、「今後は地域サイトやSNSを頻繁に更新してほしい。また、収益を今後の商品の磨き上げにも使えるように常に検証しながら、PDCAを回してほしい」と述べた。

 受賞地域は次の通り。

 【総合部門】1位 別海町観光協会(北海道)▽2位 防府市観光資源活性化協議会(山口県)▽3位 須磨観光協会(兵庫県)
【一般投票部門】1位 福岡やるばい観光!人とまちづくり協議会(福岡県)▽2位 カワイイ北海道ツーリズム推進協議会(北海道)▽3位 Tatton事務局(宮城県)
【旅行ジャーナリスト部門】1位 中央区観光協会(東京都)▽2位 八ッ場ふるさとエコツアー実行委員会(群馬県)▽3位 久慈広域観光協議会(岩手県)
【プレゼン部門】東日本1位 中央区観光協会(東京都)▽西日本1位 須磨観光協会(兵庫県)

パンフレット
パンフレット

【地域事例(1)】「カワイイ」が資源、北海道をゴスロリで観光

 カワイイ北海道ツーリズム推進協議会は「カワイイファッション」で小樽や札幌を歩く観光客に注目し、カワイイファッション愛好家向けのモニターツアーを造成した。

 「カワイイファッション」は、中世ヨーロッパの服装をアレンジした「ゴシック&ロリータ」などのファッションの総称。小樽運河や札幌の情緒ある街並みが服装とマッチングすることからカワイイファッション愛好家の間で有名になった。

 同協議会事務局長の石田哲也氏(メガ・コミュニケーションズ取締役)は「北海道の歴史的景観や風景に何か一味足して新しい旅行商品を作ろうと考えたときに、カワイイファッションで小樽運河や札幌のレトロな街並みを歩く人の存在に気づき事業化した」と語る。

 ツアーは、プロカメラマンによる撮影やクラシカルな館での晩餐会、お茶会専用のスイーツの提供などカワイイファッション愛好家に焦点を定め、こだわり抜いた。

 参加者は東京・大阪など都市圏が多く、20―40代の若年層が多いことが特徴。「このツアーで初めて北海道に来た」「雪のない北海道に初めて来た」という声も多い。さらに海外からの熱狂的なファンも多く、インバウンド向け観光の潜在要素もある。今後は一般観光客向けのファッションを体験しながら北海道のレトロの街並みを楽しめるツアーも検討中という。

 カワイイ北海道事務局=メガ・コミュニケーションズ 電話:011(644)8581。

昨年のツアーパンフレット
昨年のツアーパンフレット

【地域事例(2)】未開発の地域活用、七時雨山をトレラン

 七時雨マウンテントレイルフェス実行委員会(岩手県八幡平市)は、スキー場開発されずに牧草地となった七時雨山(ななしぐれやま)周辺地域に注目し、トレイルランニング(トレラン)と結び付け、地域の魅力を発信している。

 モニターツアーでは、トレラン以外にも国内での生産が少ない短角牛を使ったバーベキューを取り入れており、「地域限定」にこだわったツアーを楽しめる。

 また、今年で3回目を迎えるトレランレースは、受付開始から2週間で予約が定員に達するほどの人気。とくに若年層の参加者が多いことが特徴で、30代未満の若者が参加者全体の10%、30代が41%を占めている。県外参加者も多く、首都圏からの参加者もいるという。

 事務局の谷彩音さんは「トレランは新たなハード整備が必要なく、むしろ古道や牧場など地域の魅力を活かせるところが良い。開放的な牧場を走ることができるのは七時雨ならでは」と語る。

 「七時雨マウンテントレイルフェス」のホームページ(http://www.nanashiguretrail.jp/)のプロモーションビデオからは七時雨山の大自然や、牧草地を走るようすが見ることができる。

 七時雨マウンテントレイルフェス実行委員会 電話:080(5560)7070。

【地域事例(3)】山口の方言を観光に、「幸せます」で人を呼ぶ

 防府市観光資源活性化協議会(山口県)は山口県の方言「幸せます」を観光に取り入れ注目されている。「幸いです・うれしく思います・助かります・ありがたいです・便利です」という意味で使われる方言に「幸せが増す」の意味を付与し、地域ブランド化した。

 「幸せます」活用のきっかけはテレビ放送で方言として紹介されたこと。それまで方言だと意識されていなかったが、地域資源としての活用の声が地元の高校から挙がり、防府商工会議所が「幸せます」を商標登録し、防府市の統一コンセプトとしてまちづくりやイベントに活用している。

 その一つが梅の名所「防府天満宮」での市民ボランティア「幸せ写し隊」。プロや学生などのボランティアカメラマンが観光客のカメラのシャッターを押し、おもてなしするという取り組み。市民が参加しやすいように、活動バッジの製作も検討している。

 地域商品は「買った人やプレゼントされた人が幸せになること」を第一に考えて開発した。つぼみから桜の開花が楽しめる盆栽ギフトや上手く育たない場合は手厚いサポートも行う野菜栽培セットなどユニークな商品がそろう。

 防府商工会議所 電話:0835(22)4352。

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