津田令子の「味のある街」「かき氷 生イチゴ」――志むら(東京都豊島区)
2023年8月12日(土) 配信
目白駅周辺には、パリを拠点に作家活動を行っていた佐伯祐三のアトリエ記念館と、大正期に活躍した洋画家・中村彜のアトリエ記念館が残っている。
先日、それらを見学した帰りに立ち寄ったのが1939(昭和14)年に東京・青山の高樹町で先々代が創業し、戦後間もない46(昭和21)年に目白へ移った老舗和菓子屋「志むら」だ。JR目白駅から目白通りを歩いて2~3分の場所にある。
目白に移ってしばらくしてから和菓子屋の一角で喫茶を始めたという。はじめは宇治金時やあずきのかき氷など、定番のものを作っていた。今は看板メニューでもある生イチゴのかき氷を求め行列ができるほど。整理券を配る日もあるとか……。とにかく予約をしてでも食べたい一品なのだ。
生イチゴを使い、氷を山型に盛り真ん中にシロップをかけると、かき氷がつぶれてしまうのでシロップを端にかけた断崖絶壁にある滝のごとく、斜めに流すようなスタイルになったという。
このビジュアル的にも面白いかき氷は、いわゆるインスタ映えのするかき氷としても評判を呼び、連日多くのファンが押し寄せている。かつては夏季限定だったが年間を通して楽しめるようになったので、冬でもかき氷を注文する人が多いという。
断崖絶壁の氷山に、生イチゴシロップがたっぷりかかっていて、しかもそのシロップは果肉たっぷりゴロゴロなのだから人気の理由は一目瞭然だ。
実際口にすると果肉感と甘酸っぱさがたまらない。見た目に負けない本物の味わい深さを実感できる。気泡が少なく透明感が特徴の「超純氷」を使用しているという。
豆乳クリーム餡やミルクなどのトッピングを加えて、「味を変えながら食べすすむ」のもおすすめだ。
1階の販売店舗で、志むらの名物、ふわっふわで赤ちゃんの耳たぶのようにやわらかく口の中でとろける求肥のお餅に、香り豊かな栗きな粉をたっぷりまぶし、とら豆も練りこまれているやさしい味わいの「九十九餅」をお土産に買って行こうっと。
(トラベルキャスター)
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。