従業員へ周知徹底を、マイナンバー対策セミナー(JATA)
日本旅行業協会(JATA)は4月7日、東京都内で2016年1月から施行される「マイナンバー制度」の対策セミナーを開いた。施行と同時にすべての事業者が対応しなければならない制度のため、緊急企画として実施した。講師の野村総合研究所制度戦略研究室長未来創発センターの梅屋真一郎氏は、10月から個人番号の配布が開始されるため、「従業員に個人ナンバーの通知を絶対失くさないように周知を」と強調した。
社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)は、社会保障・税制度の効率性と透明性を高め、国民にとって利便性の高い社会を実現するための社会基盤。番号は国籍を問わず、住民票を基に発行される。企業には、社会保障・税関連の各種書類に個人番号と法人番号の記載が義務付けられ、源泉徴収書類などに従業員や扶養親族、支払先個人などの番号を記載しなければならない。
しかし、情報保護の観点から漏えいや不正取得、安全管理不備には厳しい罰則も整備されている。このため、企業には安全管理のための事務負担や安全管理不備の場合に従業員、会社が罰則対象となる懸念も発生。例えば住宅ローンを組む際に、番号が記載された源泉徴収票を金融機関が受け取った場合や、企業が従業員から番号が記載された住民票を受け取ると違反になってしまうという。梅屋氏は「企業にとっては大きなリスクになる」と警戒を促した。
制度開始までに必要なこととしては、経営者のトップダウンで全社的な対応をすることと、従業員への周知徹底を強調。「番号の通知カードは郵便で、10月時点の住民票の住所に送られる。いつ届くか分からないため、夏ごろに注意を呼びかけて」と述べた。
また、個人番号は第三者提供が禁止されており、「個人番号の提供」にはその都度、免許証などの本人確認が必要になるが、従業員の扶養親族で、3号被保険者の場合は扶養親族の本人確認も企業が行う必要がある。
一方で、これまではあまり考慮がなかった情報の廃棄への対応も必須になり、確実に個人情報を廃棄するための方法も見直しが迫られるという。
講演後には会場からさまざまな質問が寄せられるなか、梅屋氏は「分からないことがあれば、政府のホームページやコールセンターを利用するほか、我われのようなプロや身近な会計士、社会保険労務士に聞くのもよいのではないか」とアドバイスした。