【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その29-優婆夷宝明神社&薬師堂の神仏巡礼(東京都・八丈島) 南国独特の空気感じる神社 目・足・手の病に効く、薬師堂
2023年9月13日(水) 配信
羽田空港から空路で約50~55分程度で到着する、伊豆七島の1つである八丈島は、東京都でありながら、南国の異国情緒に満ちていて、遠い土地へ旅したような境地になります。
八丈島の歴史は深く、縄文時代から人が住んでいることが、湯浜遺跡や倉輪遺跡で確認されています。平安時代には源為朝が伊豆大島へ流罪となり、八丈小島で自害した伝説がありますように、流刑の島としての歴史もあります。
また、1600(慶長5)年の関ヶ原の戦いで西軍の石田三成方に属した宇喜多秀家は、徳川家康により八丈島に流刑。秀家は八丈島で50年近く生活し、84歳で亡くなりますが、当時ではかなりの長寿。すでに、4代将軍・徳川家綱の時代になっていました。
その長寿の秘訣は、八丈島の特産物の「明日葉」を食べていたこと。明日葉は、別名「八丈草」であり、伊豆七島に多く自生するセリ科の植物。明日葉には、老化を防ぐカロテンや抗菌、血行促進作用の高いカルコンという成分が含まれています。質素な食生活が、健康と長寿をもたらしたのかもしれません。八丈島に旅すると、お宿や飲食店で明日葉の天ぷらなどをいただく機会があり、こちらも島のグルメの楽しみのひとつです。
現在でも子孫の家系が、秀家のお墓を守っています。詳しい八丈島の歴史については、八丈島歴史民俗資料館でも見ることができます。
さて、今回の精神性の旅の一つ目の「優婆夷宝明神社(うばいほうめいじんじゃ)」は、八丈島・八丈小島・青ヶ島の総鎮守であり、島で唯一の神社庁管轄の神社。交通アクセスは、町営バスの「大里」のバス停近くです。空港からも車で10分程度。神社内には樹齢1千年の蘇鉄があり、南国独特の空気感に包まれていながらも、神聖なエネルギーを感じます。
優婆夷とは、仏教で「仏・法・僧」の三宝に仕える女性のこと。お祀りされている、事代主神(コトシロヌシノミコト)様のお妃様である優婆夷大神(ウバイノオオカミ)様はその昔、八丈島に渡り、宝明神(ホウメイノカミ)様を産み、このお二方が八丈島を繁栄させたということで、島民のご先祖様であるといわれています。
この神社のエリアにある、「玉石垣の風景」も八丈島情緒を感じる場所。こちらは八丈島の象徴の一つとなっていて、丸みを帯びた石が規則的に積み上がっていて、防風の役割があり、流人たちが浜からここまで運んで来たという説もあります。
八丈島では「石」が大切な役割を持っていて、防風目的だけでなく、信仰においても大切な役割を持っていました。八丈島の神社の社殿の裏手や周囲に、たくさんの家の形をした石の祠があります。これらは「イシバ様」という屋敷神様。島の人々は、家を建てる前に、イシバ様をお祀りして、工事の安全や病気の治癒を祈願したそうです。
八丈島の精神性の旅のもう一つは、大賀郷という場所にある薬師堂。正式には、横嶺山薬師堂。交通アクセスは、大脇前というバス停から徒歩2分程度。
南国の鬱蒼とした樹木やイチョウの木の中に、ひっそりと清々しい姿の薬師堂は、多くの人々から目や手、足に効く聖地として崇拝されています。病から人々を救済するという、薬師如来様がご本尊。目なら目、足なら足、手なら手という字を漢字、あるいは仮名で紙一杯に書いたものを何枚も綴り合せて、お供えしたそうです。
境内にある、三原山からの湧き水を遠方からいただきに来るとのこと。こちらに来て、病を治癒するという、フランスのカトリックの巡礼地である、ルルドの泉を思い出しました。薬師堂の清らかな湧き水で、心身の健康回復に良い旅をされてみてはいかがでしょうか。
■旅人・執筆 石井 亜由美
カラーセラピスト&心の旅研究家。和歌山大学、東洋大学国際観光学部講師を歴任。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。