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「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(153)「当たり前」をもう一歩前に進めよう 印象を残す気づかいを

2023年10月15日(日) 配信 

 

 レストランからタクシーで帰るとき、オーナーシェフが店の外まで見送りをしてくれました。予約がなかなか取れないという店は、こうした細部を徹底して、毎回しっかりやり続けているからだと、改めて感じさせられました。

 タクシーが出発したとき、シェフに手を振るため車内から振り返ると、スタッフをはじめシェフが90度のお辞儀で見送っていたのです。その光景に驚かされるとともに、記憶にはっきり刻み込まれる感動となりました。

 タクシーが走り始めてしばらくすると、信号待ちとなりました。狭い道から大通りに出るため、少し長い信号待ちになりました。そのとき、一緒にタクシーに乗車していた人が外に目をやりながら、驚きの声を上げたのです。外を見ると、先ほどのスタッフ2人が全速力でタクシーを追い抜いて、前の信号まで走って行ったのです。

 一瞬、別のお客様のタクシーを探しに行ったのかと思いましたが、なんと信号待ちをしている私たちのタクシーを、もう一度見送るためだったのです。再び素晴らしい笑顔の見送りを受けることとなったのです。「たかが見送り」と思われるかもしれませんが、「ここまでするのか」という、最後に強い印象を残す行動が、また来たいお店として、記憶に深く残るのです。

 あるとき、通販会社で商品を頼みました。とくに急ぐものではなかったのですが、注文後に通販会社から電話がありました。その内容は、通常だと翌日に届く荷物が、高速道路の集中工事のため、配達が翌々日になる可能性があるというものでした。

 運送会社から通販会社に連絡があったのかもしれませんが、指定した日から遅れるといった場合を除き、そういう連絡をもらった記憶がありませんでした。

 また、地方のある花屋さんに、クライアント企業の新店オープン祝いの花を、電話で頼んだときのことです。どのような花が良いか、予算はという通常の質問もありましたが、地域性もあると考え、一般的な開店祝いの花がどのようなものを出されているのかも、教えてもらいました。

 すると、店の広さや店先のスペースなどを聞かれて、分かる範囲で応えてオーダーを終えました。驚いたのは、その後です。領収書をメールでお願いしたのですが、そこに「これでお届けしました」という、きれいに飾られた花の写真が添付されていたのです。

 予定通りに出荷して終了ではなく、受け取る側や送り手側に想いを寄せてくれる気づかいを、非常にうれしく思ったのです。私たちが当たり前と考えて行う日々の業務も、もう一歩前進させることで、大きな感動を創り出せるのです。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

 

 

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